Jeffrey

白痴のJeffreyのレビュー・感想・評価

白痴(1999年製作の映画)
3.0
「白痴」

冒頭、過去と未来とも思える終末戦争下の日本。長屋の並ぶ裏路地、カメラが回転して入ってくる。押し入れの中に隠まわれた一人の女、上空を飛ぶ爆撃機、炎に包まれる街、ディレクター、視聴率、テレビ局に勤務する男。今、厭世的なSF世界が広がる…本作は平成十一年に手塚眞が監督、脚本を務め主演に浅野忠信、甲田益也子を迎え撮った坂口安吾の同名小説。原作を大幅に脚色したそうで、過去とも未来ともとれる世界を舞台としたSF要素を挟んだ作風仕立てである。この度、BDが発売され初鑑賞したが正直微妙、退屈な部分が多い。ヴェネツィア国際映画祭でFUTURE FILM FESTIVAL DIGITAL AWARD VENEZIAを受賞している。この作品のロケ地が新潟で作られたーつに原作の坂口安吾の生まれが新潟だったからだろう。この映画の想像の息吹の部分を非常に良く、光明に写し出される光と影のコントラスト、音楽が鳴り響き巨大な炎が吹き上がる瞬間は圧倒的である。

さて、物語は過去と未来とも思える終末戦争下の日本。映画制作を志す伊沢は歪んだ長屋が並ぶ路地裏に間借りをしていた。テレビ局に勤務する彼は、粗暴なディレクターの落合と、視聴率七〇%を誇るカリスマ的アイドル銀河のサディスティックな仕打ちで、身も心も打ちのめされる毎日だった。そんなある日、伊沢の部屋の押し入れに、隣に住む木枯の妻、サヨが潜んでいた。その夜から、彼女を押し入れにかくまう秘密の生活が始まる。戦争にも仕事にも疲れ果てた伊沢にとって、彼女の存在だけが救いだった。しかし、彼の住む路地の上空にも爆撃機が現れて街は炎に包まれる。伊沢はサヨの手を取り、燃え盛る炎の中を駆け抜けて行くのだが…と簡単に説明するとこんな感じで、ヴィジアリストの手塚が、十年の月日をかけて完成させたジャンルを超越したアート×エンターテイメント作品である。

原作に新たなイメージを加え、原田芳雄など豪華出演を果たし、新潟に巨大な街のオープンセットを作り、実際に爆発炎上させたスペクタクルシーンなど、妥協を許さず追求した圧倒的な映像美が国際的に高い評価を受け、多くの映画祭に招待され、様々な賞に輝いた。公開二〇周年を迎えた去年に、スタッフが集結してオリジナル・フィルムからデジタル・リマスター版を制作して、全国劇場公開もされていた。冒頭のSFチックなファースト・ショットから、カメラが回転しながら路地裏を映し出す画期的な演出はすごく好きだ。んで、原田芳雄のキャラクターが強烈すぎる。ただ途中からグダる…。


クライマックスの圧倒的なCGの炎の、例えば線香花火のような炎が空高くから降り注ぐシーンや河の海面に反射した炎の歪み、次から次へと大爆発する街並み、噴水のごとく炎が噴射する描写などは圧倒的、音楽と共に凄まじい迫力がある。ほぼこのクライマックスでベネチアの審査員辺りは評価しているなと勝手ながらに思ってしまった。それにしても美術スタッフによるイメージ画像が非常に良かった。近未来的でありながら、あの銀河と言う少女のインパクトは凄いものであった。それから表現主義のスタイルを取り入れている主人公の部屋のイメージもなかなかである。この作品にはたくさんのイメージが残されている感じがした。特に自分は路地の風景が非常に好きである。

まるでバベルの塔のイメージを引用しているかのような、広大に作られる路地のセットは素晴らしいの一言だ。多数のボランティアによって作られているようだ。それと冒頭というかプロローグに登場するモデルのような風貌の女性たちはまさにパリコレなど国際的なショーで活躍してるような実力モデルの風貌があり、これまた衣装デザインのイメージにぴったしで美しかった。空想の狭間で絶妙に表現しているかのようなそれぞれのファッション、古着だったりビジネスマン風だったり、着物風だったり和風テイストもあり洋風テイストもあって非常に綺麗である。
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