熊太郎

夫婦善哉の熊太郎のレビュー・感想・評価

夫婦善哉(1955年製作の映画)
4.2
森繁久彌にすっかりハマってしまった。

若かりし久彌、なぞの色気がある。
すれっからく世間慣れしているようで計画を立ててはいちいち失敗する。はぐれ者の根っこにあるいじけた純情。ズルサをおぼえた赤ん坊のようなオダサク的ダメ男がはまってる。

道楽息子の柳吉(森繁久彌)とヤトナ芸者の蝶子(淡島千景)の色っぽさとチャームで見ごたえ充分だった。寝間の誘い?シーンもそうだけど映画の見えていないところから関係の艶気が溢れ出ているような。
「ええやないの、二人で濡れて行こうやないの」

バディ映画としても破茶滅茶にかわいい二人。
ずっと見ていたくなる。チョイ役の浪花千栄子や山茶花究の存在感もパンチが効いている。

騙される莫迦、蝶子の「うちはホントだって信じたいもの」「うちはアホや」という台詞にああ賢明な人やなあと思う。知性があればこそ、莫迦になり、結果、自己犠牲を厭わない。



川島雄三『暖簾』でも女が男の椀にうどんの具を放り込んでいたけど、ここでもぽやーとしている男の皿に女が具を放り込んでいた。生活の細部に宿った大阪の女の可愛らしさよ。
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