KAJI7

泥の河のKAJI7のレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
4.5
昭和31年、大阪--

終戦から10年。
硝煙の香りがまだ微かに残る泥の河に魅せられた子供たちは、けだるい日差しの下で淡く切ない一夏を過ごす---

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とても好きです、この作品。
なんて言うんですか、その、希望を持たせない感じというか、期待を押し付けない感じというか、そこはかとない哀愁が、観ている僕達に優しくそっと寄り添ってくれる感じというのがたまりません…😌😌
北野武監督の『菊次郎の夏』とかに近いかもしれません。(これも大好きな映画です笑…🎬)

声高に約束を交わす子供たち。
新聞に目を落とす親父の、角張った胡座。
叱責するお袋のエプロンの皺。
近所の川に居るらしい、自分の丈ほどもあるお化けゴイ。
おかっぱの似合う、しっかり者の女の子。
もう会えないだろう病人の細った腕。
汗に溶けゆく女と男。

全く知らないはずのに、胸の内から自然と湧き出るノスタルジー。

夏の涼しさって、大人にならないと分からないもんです。

子供の頃には分からなかった。
大人だって色々忘れがたい悲しみとかやるせなさを抱えてて、時にはすっかり諦めてしまったり、思い悩んだり、誰かを裏切ったりしてしまうこともある。
子供と同じく未完成で、可哀想で、それでいて可愛らしい生き物なんだってこと。

成人したばかりの自分に、改めてそう感じさせてくるこの映画の語り口が、何だか心に染みました…。

名作かと思います…!
見たことない方はこの連休にでも是非。
KAJI7

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