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泥の河のmar88のレビュー・感想・評価

泥の河(1981年製作の映画)
4.8
これかなり傑作なんじゃないでしょうか?

そんなこと私が言わなくても、ご存知の方も多いとは思うのですが、私は全く知らなくて…
観れて良かったー。

昭和30年の大阪が舞台。河口でうどん屋を営む家の息子・信雄は両親から近づいては行けないと言われていた舟に暮らす姉弟といつしか交流を持つ。

その舟では姉弟の母親は売春をしており、弟の喜一と友達になったという息子・信雄に両親は戸惑ったものの分け隔てなく姉弟に接するようになる。

戦後という複雑な時代背景を大人目線ではなく3人の子供の目線で描いていて、モノクロだけれどとても観やすく、私の好みの「セリフでの説明がない」タイプの映画なのでそこもポイントが高い。

何より子供3人の演技が最高です。

お風呂に入った姉の笑い声を聞いて弟が
「姉ちゃんが笑ってる。笑ってるなぁ」とポツリと呟いたり

50円づつ信雄の母親からもらい、お祭に行く途中に立ち止まり喜一が
「お金持ってお祭に行くの初めてだ。」
と言うような、ハッとするようなセリフが多い。
また、
姉弟の母親が物語の初めに姿は見せないが、信雄が舟へ来てることを知り「黒砂糖あげて、あまりここへは来ない方がいいと言ってやり」というセリフがある。
コレには、最後の信雄と喜一の別れのシーンに繋がる名台詞だと思う。
素晴らしい伏線の回収。

姉弟の母親は加賀まりこ。
当時既に売れっ子女優だった加賀まりこさんは、あまり撮影時間がなく出番も声だけと言うシーンが多いが信雄と初めて顔を合わすシーンの神々しさと言ったらない。
綺麗すぎる。
売春している割に綺麗すぎる。
何処かの高級店で働いているレベル。
や、もう女優レベル。

だからこその、この物凄い少ない出番で良かったのだと思う。
主演シーンがいっぱいあったら、おそらく違和感が半端ない。
それぐらいに綺麗だ。


また信雄の両親が底抜けに優しい。
こんな父と母に育てられたら、貧しくてもそりゃ真っ直ぐ育つだろうなと。
そして、他人にも優しく、愛せる人に育つんだろうな。
そして、親孝行な息子に育つんだろうな。

9月に劇場公開があるらしい。
劇場で見て観たいな。
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