菩薩

パッション・フィッシュの菩薩のレビュー・感想・評価

パッション・フィッシュ(1992年製作の映画)
3.8
事故で脊髄を損傷し下半身付随になってしまった(敢えて書きますが)白人の女優と、過去に薬物依存に苦しみ愛娘との生活も引き裂かれた黒人の女性とが緩やかな連帯を為し、人生を再浮上させていく優しいお話。この映画のテーマはおそらく「浮き上がる」って事で、これは最初のリハビリがプールって時点で明白に提示されるし、度重なる写真の現像で更に印象付けられる。また過去の回想が挟まれる訳ではなく、療養地に訪問して来る互いの関係者やその地で新たな関係を築く相手との会話の中で身の上が明らかにされていく。肝心の『ブラザー〜』をまだ観ていないのでアレだが、決して劇的で無いながら緩やかな人間性の回復ってのはジョン・セイルズの十八番の様な気がするし、その際に人種や文化的な隔たり(舞台となるルイジアナは移民が多いやらなんやら)を簡単に飛び越えてみせるってのが彼の作品の魅力の一つなんじゃないかって気がビンビンにしてくる。言うてしまえば24時間テレビ的なよくある話だし『最強のふたり』なんかまさにこれのパクりじゃねえかなんて気がしてしまうが、その手の作品よりよっぽど染み渡る良さがあると思う。ジョン・セイルズのこう言う視線は今こそ必要とされるものなのでは。たぶんだけどカウリスマキとか好きな人は好きなやつ。
菩薩

菩薩