Sari

テレビに挑戦した男・牛山純一のSariのレビュー・感想・評価

3.8
テレビ草創期を代表する名プロデューサーとして日本のみならず、海外にもその名を轟かせテレビ界に一時代を築き上げた牛山純一。(1930〜1997)の業績を辿るドキュメンタリー。
代表的な作品は、民放最初のテレビドキュメンタリー「ノンフィクション劇場」(〜1969)、「すばらしい世界旅行」(〜1990)など牛山氏が制作したテレビドキュメンタリー本数は2400本近くになる。

1953年テレビが放送を開始した日から、制作現場の最前線で活躍してきた牛山氏の足跡を、貴重な番組の引用と、関係者22人の証言で辿る。 

早い段階で、ドキュメンタリーの本質の在り方を探究し始めていた牛山氏は、草創期からの外国のドキュメンタリー映画の手法には演出が付き物であると気がつき、自身のドキュメント制作に取り入れていった。
又、主観的で人間くさいドキュメンタリー作りを目指した牛山氏は、大島渚、羽仁進、東陽一、新藤兼人、土本典昭らのヌーヴェル・ヴァーグ的感覚をもった個性的映画人を登用した。土本典昭がその思い出を語る姿は貴重である。また大島渚夫人・小山明子さんもインタビューに答えている。彼女が出演した経緯は、当時、大島渚が闘病中であったことも要因の一つかも知れない。

本作は、ドキュメンタリー映画監督・佐藤真の企画により制作がスタートし、2007年に佐藤氏が他界。「いずれ牛山を通じてテレビメディアの変容時代相を映し出すようなドキュメンタリー映画を夢想している」と語った佐藤氏の遺志を、畠山容平監督ら映画美学校で佐藤の教えを受けていたゼミ生たちが引き継ぎ完成させた。
パリの街角で、文化人類学者・映画監督ジャン・ルーシュがインタビューで、「彼(牛山)は日本のロバート・フラハティのような存在なのです。」という言葉が印象的である。
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