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男と女 人生最良の日々のSariのレビュー・感想・評価

男と女 人生最良の日々(2019年製作の映画)
3.8
クロード・ルルーシュ監督の名作『男と女』(1966)から20年後を描いた続編である「男と女 Ⅱ』(1986)はなかったことのように、本作では、ジャン・ルイとアンヌの53年後の再会が描かれる。

レーシングドライバーとして活躍し、現在は老人ホームで暮らしているジャン・ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、記憶があいまいになりつつある中で、妻に自殺されたころに出会って強く惹かれ合ったアンヌ(アヌーク・エーメ)という女性のことだけは忘れていなかった。アンヌを追い求めるジャンの姿を目の当たりにした息子は、離れてから数十年も経っている二人を再会させるため、彼女を捜そうと思い立つ。

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『男と女』といえば、クルマ、馬、移動撮影に、望遠のロングショットだが、2CVに乗りながら認知症のジャン・ルイにはマスタングが見えるという描写がある。

さらに驚いたことに、本作にはルルーシュ監督の短編映画『ランデヴー』(1976)も組み込まれている。
夜明けのパリを疾走するシーンでは、二人の最良の瞬間が、遠い過去という夢幻のような雰囲気で織り交ぜられている。これにより、二人の間に重なる様々な思い出や感情がより深く描かれている。

主演のジャン=ルイ・トランティニャンは2022年6月17日に、アヌーク・エーメは2024年6月18日に他界し、事実上本作は2人の遺作となった。ここに、追悼の意を表します。また、この作品を遺したクロード・ルルーシュ監督に敬意を表します。
老人ホームで暮らしているジャン・ルイの言葉や認知症の演技は、実齢のジャン=ルイ(88歳)自身と重なり合う。眼前の女性が、本人であるにも関わらず記憶の中の最愛のアンヌと結びつかないもどかしさをリアルに感じさせる描写が切ない。時折笑顔を見せると、若かりし頃のジャン=ルイのチャーミングな面影が垣間見られた。アヌーク・エーメが豊かな髪をかきあげる仕草が印象的。彼女は当時87歳とは思えない、信じがたく優雅な美しさをスクリーンに刻みこの世界を去った。

また、映画主題歌『男と女~人生最良の日々』の音楽を担当したフランシス・レイは、この音楽完成後に突然亡くなり本作が遺作となった。主題歌を歌ったニコール・クロワジールは現役だが、ピエール・バルーは亡くなっているので代わりに新進アーティスト:カロージェロが担当しているが、魅力的な素晴らしい歌声をしており立派に大役を果たしている。
https://youtu.be/d5omWB_lQeE?si=9DYEXlic1Jqx12Og

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フランスの名匠クロード・ルルーシュ監督が1966年に手がけ、第19回カンヌ国際映画祭パルムドールとアカデミー外国語映画賞、脚本賞を受賞した名作恋愛映画「男と女」のスタッフ&キャストが再結集した続編。前作の主演アヌーク・エーメとジャン=ルイ・トランティニャンが同じ役柄を演じ、53年後の2人の物語を過去の映像を散りばめつつ描いた。元レーシングドライバーのジャン・ルイは、現在は老人ホームで暮らし、かつての記憶を失いかけている。ジャン・ルイの息子はそんな父のため、父がずっと追い求めている女性アンヌを捜し出すことを決意。その思いを知ったアンヌはジャン・ルイのもとを訪ね、別々の道を歩んできた2人はついに再会を果たす。(映画.com)
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