マサ

脳内ニューヨークのマサのレビュー・感想・評価

脳内ニューヨーク(2008年製作の映画)
5.0
fuck everybody.
映画で一番好きな台詞かもしれない。

批評家からの支持も集める劇作家ケイデンは、家族との関係や迫りくる死への不安に苛まれていた。そんなある日、念願の「天才賞」受賞に併せて多額の援助金を受け取った彼は、自身の生活を丸ごと再現した壮大な演劇作品を創りはじめる。

決して面白い映画ではないけどカウフマンの代表作だと改めて思う。マルコヴィッチの穴の進化系とも言える奇想天外ぶり。あの導入からあんなラストになるなんて誰が思いつくのか。それでいて、ひたすら孤独で暗くて冷たく、ずっと自問自答。こんな映画を作れる人は他にはいない。やっぱり天才。

シネクドキ(提喩)とニューヨーク。たぶんこの映画そしてカウフマンの劇作そのものを表したタイトル。そういう意味でもやはり代表作。だから日本語タイトルも『シネクドキ、ニューヨーク』の方がしっくりくると思う。

悲しみとか苦しさは克服するものではなく抱えていくものだ、というのが解ってくるとますます沁みる映画。ずっとモヤモヤしている一部の人達にとっては、それと正面から向き合って「悲しい、苦しい」と謳いきることもひとつの人生讃歌になる、というのをクライマックスの葬式での感動的なシーンで思った。
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