みおこし

偶然の旅行者のみおこしのレビュー・感想・評価

偶然の旅行者(1988年製作の映画)
3.4
ローレンス・カスダン監督作品。ジュディ・デイヴィスは本作でアカデミー賞助演女優賞を獲得。

ビジネスマン向けの旅行ガイドブックを手掛けている作家のメイコン。彼は強盗事件に巻き込まれた息子が亡くなって以来、妻との関係が破綻して別居中だった。ある日、彼の飼っている犬が出版担当者の前で暴れるというトラブルがあり、犬の訓練士を務めるミュリエルという女性に預けることになるのだが…。

全体的にどこか浮世離れした雰囲気が漂う、独特な映画でした。家族を襲った悲劇から立ち直ったようでまだ立ち直れずにいる男が、風変わりな女性のミュリエル(ジーナ・デイヴィス)と出会い、少しずつ人生の希望を取り戻していくお話。
”旅行”という自分の世界を切り開いてくれるテーマの本を担当しているにも関わらず、事件以来自らの殻に閉じこもって外界との接触を最小限に生きているメイコン。彼とは対照的に、シングルマザーながら常にポジティブで周りからの視線も気にせず、人生を豊かにしようと日々努めているミュリエル。まるで正反対の彼女と接するうちに、自分の世界を広げてもっと人生を”旅行”する喜びを見出していく過程が描かれていて、元気をもらえる映画でした。人生は本当に色んなことがあるけれど、喜びだけでなく悲しみや怒りなどあらゆる感情を経てより実のあるものになっていく…。自分の世界を飛び出せば飛び出すほど、偶然の出会いが生まれ、思いがけない幸せが訪れるってことなんだろうな。

メイコン、ミュリエル、そしてキャスリーン・ターナー扮するメイコンの妻サラの3人を軸に、淡々とつづられる日常。3人の円熟した演技も相まって、ラストは何とも言えない幸福感に包まれる秀作でした。
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