ほおづき

アルジャーノンに花束を/まごころを君にのほおづきのレビュー・感想・評価

3.5
エヴァのタイトルにもなった映画『まごころを君に』の原作小説『アルジャーノンに花束を』が何度も読み返すくらい好きだったからこの映画も見てみたけど、そこまで原作の良さを出せていなかった。

精神遅滞の主人公が知能を高める手術を受けて天才になるっていうお話で、賢くなったことによる欲望との葛藤や、その影響での周囲との軋轢を描く物語。
もっと頭良くなりたいっていうような普遍的な悩みなんかを考えさせられる作品。


最近某動画配信サイトでこの映画を見つけたので見てみたけど、だからタイトルがここまで大幅に変更されてるのかと思うくらいに原作とは別物だった。

原作小説は主人公の手記という形をとっていて、ひらがなばかりで読みにくい文章が徐々に知的になっていくという手法がすごく感傷的で、タイトル『アルジャーノンに花束を』の由来にもなっているラストの描写も文字だからこその感動がある。

だからといって映像化が難しいというわけでもなく、そもそもこの映画には原作ほどの哲学性もないうえに製作者の変な思想が入ってきちゃってたし、主人公の葛藤も抽象的な精神世界の映像でうやむやにされてたしで、原作の良さは微塵もなかった。
一番最悪なのは、女性教師とのラブストーリーになっていたこと・・・

原作は、知識を身につけることの危険性や本質を伝えてくれる名作だと思う。

原作がほんとにいい。