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屋根裏の女たちのENDOのレビュー・感想・評価

屋根裏の女たち(1956年製作の映画)
4.5
入り江に面した漁村(通学バスには須崎行[高知県?]の文字)で細々と饂飩屋を営むシングルマザーの望月優子。奥行きを活かした路地のセットが秀逸。多々良純が酌婦でも置くよう助言すると、ストリップ巡業の女(倉田マユミ)が転がり込んできて置屋の女主人になるその速度に圧倒される。崩壊も一瞬。マユミのギャル語?(何ごとじゃ!)がいい。そのきっぷのよさが評判となり、屋根裏は違法の貸座敷に変貌する。最初は泣いてる優子もノリノリで店を改装・増築して俗物ぶりを近所に振りまく。おぼこ娘の川上康子は、甲斐性のない英二に孕まされて母と同じ轍を歩む。
2人目の酌婦、村田知栄子は激情型。惚れた客の婚約を聞いた途端に刃傷沙汰に!とにかく怒声が怖い!
3人目は貧しさから父に身売りされた藤田佳子。給仕係からいきなり漁業組合のオッサンの相手をさせられる。階下からその脚を舐めつけるように見る視線とオッサンのクローズアップ!やりすぎ!御用聞の魚商に見初められ、相思相愛になり船を抵当に入れてまで結婚。優子に搾取されつつも御用聞として逞しく生きる姿に泣く。
4人目、岸田今日子は元洋パンで、黒人兵との間に子どもがいる様子。オシャレで明るい性格だが、ふと観光に来た黒人兵の娘を目撃して(ラジオから三橋美智也『あの娘が泣いてる波止場』が流れている)から失踪する。
5人目は市川春代!『鴛鴦歌合戦』の頃と変わらぬ声の艶と仕草に感動する。過去は語られずにいたが、多々良純の元妻であることが判明。優子の店で再会し画面から消えてしまう。
6人目は八潮悠子。事情は伏せたまま店に転がり込むが、恋人の為に毒を盗んだことから殺人幇助の罪で連行されてしまう。
脇を固める門付けの浦辺粂子と宿屋の賀原夏子は人生の苦味を体現していて素晴らしい。
さらに画面の強度。情事を目撃した川上康子が階段から走り降りると干物を吊るした籠に頭をぶつけてしまう。その揺れた物体を写し続けるのはベルイマン 。さらに落ち込む康子の足元に映る沢蟹。みんなで一泊する『望海楼』でのバカンス。マユミが英二を夜の浜辺に連れ出すあのロングショットの緊張感。常に変化する人生、人々の邂逅!大満足!和室に置かれるカメラの低さ、これぞ日本映画です。
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