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殺人狂時代のakrutmのレビュー・感想・評価

殺人狂時代(1967年製作の映画)
4.5
いきなり命を狙われるようになった犯罪心理学が専門の大学講師・桔梗信治が、記者の鶴巻啓子や自動車泥棒の大友ビルとともに、殺し屋たちに立ち向かう様子をコミカルかつスタイリッシュに描いた、岡本喜八監督のアクション・コメディ映画。当時は公開直前でお蔵入りになり、遅れて公開された後も興行的にはまったく振るわなかったが、その後リバイバル上映などで再評価されるようになった。

とにかく変わったシュールな映画であるが、映像はお洒落だし、理屈抜きにして面白い。プロットも一応あるのだが、細かいところは勢いで進んでいき、またそれが全く気にならないほどのテンポである。ラストに向けての展開もなかなかだし、いろいろと解釈できるラストシーンも秀逸。当時の観客に受けなかった(現在でも興行的に成功するかと言われれば心もとないが)のは仕方ないが、海外に出していれば違った評価を受けたのかもしれない。

本映画での一番の見どころは、桔梗信治を演じた仲代達矢のとぼけた演技だろう。当時すでに黒澤明、小林正樹、成瀬巳喜男などの著名な監督たちに起用されて硬派な演技が評価されていたが、本作ではとぼけた三枚目という仲代達矢の素の魅力が炸裂している。本人が言っているように、普段の仲代達矢はこの主人公のようなとぼけた感じだそうで、プライベートで仲の良かった岡本喜八監督もそのことを知っていて仲代達矢にこの役を演じさせ、彼の新たな魅力を引き出すことに成功したのだろう。女性記者を演じた団令子のセクシーな魅力もグッド。死神博士そのままの天本英世が、もうひとつの見どころかも。
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