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風が吹くままのadeamのレビュー・感想・評価

風が吹くまま(1999年製作の映画)
3.5
キアロスタミがヴェネツィアで審査員特別賞を受けた秀作。
死に行く100歳の老婆の取材で小さな村を訪れるも、その時は中々やって来ず、村の人々の暮らしを眺め続けることになる男の物語です。
時の流れに取り残された村で、テストが気になる少年や子沢山の女性と会話し、携帯電話が鳴る度に慌てて電波の入る丘の上まで車を走らせる場面が繰り返される中盤はさながら迷宮で、劇的なストーリーを期待した観客は姿の見えないクルー同様何も起きない環境に置かれ、自力では如何ともし難い状況で身動きが取れない歯痒さを追体験させられます。
痺れを切らして席を立ち、元居た世界に戻るのか、永遠にも思える時間の流れに身を委ね、それもまた良しと思うのか、価値観と感受性を踏み絵させられているようでした。
そしてそれを切り抜けた先にはご褒美のようにささやかなドラマと、美しいロングショットの中での老医師によるテーマ解説が待っており、この至高のラスト20分が作品をより味わい深くしていました。
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