風が吹くままの作品情報・感想・評価

風が吹くまま1999年製作の映画)

THE WIND WILL CARRY US

製作国:

上映時間:118分

ジャンル:

3.8

「風が吹くまま」に投稿された感想・評価

netfilms

netfilmsの感想・評価

3.9
 テヘランから西へ700km離れた、クルド系の村を訪れたTV局のクルー、主人公のディレクターはこの村の独特の葬儀の様子を取材しようとこの田舎の村を訪れるのだが、あてにしていた瀕死の老婆がなかなか死んでくれない。この老婆の姿は、映画の中に一度も出て来ない。あまりにも重要な役柄ながら、彼女の病気の進行状況が伝聞でしかわからないという大変ユニークな演出をキアロスタミは行っている。映画の中で象徴的なアイテムとして、何度も携帯電話が出て来る。99年当時、日本でもそこまで普及していなかった携帯電話の電波が怪しいため、主人公は電話がかかってくるたびに、何度も車で高台に登る。この一連の様子を、キアロスタミは律儀にも何度も反復し撮影する。お得意のスーパー・ロング・ショットで田舎道をジグザグに走っていく車を、まるで絵画のような美しさで撮影していく。その中で主人公の心情が何度も変わり、喜怒哀楽がめまぐるしく変化するが、何度目かの連絡では、主人公の妻の親戚が急死するという報せを聞くことになる。もう先が長くないと言われている老婆が元気を取り戻す一方で、ある意味皮肉的に突然の死が告げられる。このことは中盤の「世界が終わる時、善人と悪人はどうなるのか?」という言葉に呼応する。

 主人公は高台の上で穴を掘る若者に出会うのだが、この若者の姿も映画の中には一度も出て来ない。重要な登場人物であるかのように見える老婆も若者も、映画の中には一度も出て来ないという奇抜な演出で観る者は戸惑う。またこの映画の中には印象的な詩が何度も登場する。冒頭、700km離れた村をひたすら車で探す際には、ソフラブ・セベヘリの詩が用いられ、途中主人公が暗闇の洞窟の中で乳搾りをする16歳の少女に聞かせるのはファッロフザードの詩である。また医者がバイクに主人公を伴いながら、独特の死生観を興じる場面では、オマール・ハイヤームの印象的な詩のフレーズが用いられている。これらの詩とこの村の美しいロケーションと印象的な音の使用が、キアロスタミの演出を次のレベルへと押し上げている。最初は村の独特の葬儀を取材することが目的だったのだが、いつの間にかその目的自体がどこかへ行ってしまうのはキアロスタミ固有の特徴である。クライマックスで黒い装束を来た女性たちの列を発見し、主人公は自然とシャッターを切っていく。けれど肝心要の葬儀の映像はこの映画のどこにも映っていない。僅かに音で表現されるのみである。豊かに実った麦の穂が風にたなびく様子や村人たちの日常、小高い丘の上から遥かに見える山々の稜線などの美しい映像は雄弁に語りかける。「天国に行って、戻って来た奴がいるかい?」の言葉が耳から離れない。

渋み!

明るくなるわけでもないけれど、なんとなく視界は爽やかになる。

イランの風や大地が、生きること死ぬことを飾り立てずにそのまま淡々とうつしている。

もう一回観たい。内容忘れて、そのたび観たくなる。
まつこ

まつこの感想・評価

3.5
葬式を撮りたいがために老婆の死を待っていたはずが、その仕事がなくなった途端、彼が生にしがみつく。

確かに明日死ぬかもと思いながら毎日生きるのは辛すぎる。そんな風に80年生きるのは身がもたない。忘れっぽくてちょっとバカなくらいが楽しんで生きられるんだろうな。
yadakor

yadakorの感想・評価

2.0
彼の作品はtenしか見ていないのだけど、かなり似たものを感じた
おれの好みとは程遠いのは間違いないが、監督の個性が出せるという事実はとても素敵で、イランの映画作製システム(配給会社、プロデューサー、ディレクターの力関係)が良きものであることが伝わってきた(ハリウッドと比べて)
Taul

Taulの感想・評価

5.0
『風が吹くまま』葬式の取材に来たTVディレクターと村人達とのかみ合わない交流をユーモラスに描く。人物をあまり映さない大胆な演出が想像力を刺激する。淡々と描かれる生に対する賛歌とイランの人や大地の素朴さ。キアロスタミの素晴らしき映画世界。
キアロスタミの中では下の方。
山に面した立体的な街の作りが印象的
oqmr

oqmrの感想・評価

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観光客は「部外者」だ、「闖入者」だ。
未だ伝統的な生活を営むクルドの村の珍しい葬式の風景を撮影する為、老婆の死を待つクルーたち。実際誰かが死にそうになると必死に助けを求めれる善良さ、と実際老婆が死ぬとシャッターを切れてしまう薄情さ。自分は死を撮影しにきたのに、村人の生活に興味津々なところ。亀を殺そうとしたり、井戸掘りの人夫を助けようとしたり。死を望んだ老婆に医者を手配したり、主人公を善人とか悪人とか定義するのは難しい。しかし自分の変化に対して一番無知であるが故に、風が吹くままに「伝統」とか「自然」とか「神」とか、自分より大きなものの流れに素直に漂う素直さ、潔さを清々しさが気持ちよく感じた。
結局のところ、その土地の「文脈」に入らないと、部外者でしかなく、(他のクルーのように)何も見えない。それ故な文脈の偉大さ、神秘を、丘までの荒々しい道、地下の娘との詩のやりとりなど、僕は多分一生覚えているような印象的な美しさで彩りながら描かれたとても完成されたある意味垢抜けた作品だと思う。
キアロスタミが亡くなってから早くも一年が経過したそうなので自主的に追悼鑑賞。

キアロスタミは大好きな監督ですが、この作品あまり心に響かなかった…途中で何度も寝落ちしてしまいました。もう一度見直した方が良さそう。

クルド人が暮らす地域を舞台にしたこともあってか、バフマン・ゴバディが助監督と俳優として参加しています。
キアロスタミの映画はあくまで自然で、飾りたてたところが全くなく、それでいて知的で洗練されていて、まるであまり言葉を発しないけれど、たたずまいに品があり、ふと口にする一言に不思議なユーモアと、人生を知りぬいた味わいがある初老の紳士のようなイメージがあるけれど、本作では言葉を待ち続けたものの、最後まで待ちぼうけを食らったようなさびしさ、背中を冷たい風が吹きさっていくような感懐があった。

無常感を表現したならば、それは見事な映画ではあるけれど、その時、そして今でも映画を観るという行為はちょっと特別で、あえて無常感を感じたいと思う境地には達していないこの身としては、どうしても当時物足りなさを感じたし、今でもそれは変わらない。
takandro

takandroの感想・評価

3.8
ドキュメンタリーくさくなくて好きなはずなんだけど、でもさすがに眠くなった。。キアロスタミらしい詩が時々響く。
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