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風が吹くままのleylaのレビュー・感想・評価

風が吹くまま(1999年製作の映画)
3.8
配信終了間近につき。

遠くまで続くジグザグの丘陵、白い土壁の家々、ターコイズブルーの窓枠、放し飼いの鶏、素朴な村人たち…キアロスタミ監督はこのクルドの小さな村に暮らす人々を記録しておきたいと思ったのかもしれない。

村人がカメラを意識することなく暮らしていて、まるでセミドキュメンタリーのよう。時々挟むいくつかの詩がしっくりハマります。

珍しい風習のある葬式を取材するためにテレビクルーがクルドの村にやってくる。余命わずかのお婆さんが死ぬのを待つためだ。しかし何日経ってもお婆さんは死なず、時間だけが過ぎ、主人公は苛立っていく。

村人たちは、よそ者を疑問も持たずにすんなりと受け入れ、かといって必要以上に親切にもしない。
“風が吹くまま”
詩のタイトルでもあるこの言葉がよく似合う村。

村人たちと触れあい、暮らしぶりや価値観を見つめるうちに、主人公は人の死を待つことの罪悪感と向き合い、生と死についてを考えることになる。

亀もフンコロガシも人間も、この村ではただ生きることのみに生きているようで、そんな生き方が美しくみえる。対照的に、何度も掛かってくる文明の代表とも言える携帯電話とそれに振り回される人間が醜い。

麦の穂が揺れる丘をバイクで行くシーンで、医師が語る言葉と詩がよいのです。きっと主人公は生きる悦びを感じたのではないでしょうか。

天国は美しい所だと人は言う
だが私にはブドウ酒の方が美しい
響きのいい約束より
目の前のブドウ酒だ
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