Balthazar

1492・コロンブスのBalthazarのネタバレレビュー・内容・結末

1492・コロンブス(1992年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

たまたまCATVで観て記憶にあったので。

クリストバル・コロンの新大陸到達500周年を記念して制作された栄光と挫折の話 実際にコロンの子供が書いた伝記をベースにしている。

15 世紀、まだ地球が平面だと信じられていた時代。イタリア系移民のコロンは地球が丸いと信じ、幼い息子にそれを海辺で教えていた。

周囲の人々からバカにされ、教会からも異端者として睨まれるが、コロンは屈せずに地球は丸いと主張する。当時の“常識人”にとっては彼は奇人変人の類だったようだ。生前は無名とか変人扱いだった人が天才だと認識・理解されるのには時間がかかるもの。パイオニアの哀しさよ。

海運で栄えるスペインだったが、「大西洋経由インド行き航路開拓」プロジェクトを考案して援助を訴えても、誰も賛同するスポンサーはいなかった。

しかし、その話を聞いた船主の一人が興味を持ち、イサベル女王との謁見の約束を取り付けてくれる。地球は丸い、だから西へ西へと海を行けばアジアに着けるはず、黄金を積んで帰ることができる!成功の暁には爵位をくれだの総督の位をくれだのと山師みたいなことを言い放つ豪気なコロン。なんとかイザベラ女王(シガニー・ウィーバーだったんだね)から王室の援助を獲得する。

二人の息子にしばしの別れ。無論、生きて帰ってこられる保証はゼロ。

そして1492 年、スペイン王室の援助を受けてサンタマリア号で未知の海へ乗り出した。

無限に続くような海原を見ながら過ぎゆく日々。嵐に見舞われる。狭苦しい生活空間からストレスが生まれ人間関係がピリピリ。ビタミン欠乏で壊血病にかかる。
ビタミンなんていう概念の無かった時代、壊血病は不治の病とされていたそうだ。

一体いつになったらアジアとやらに着くんだよ。コロンは大西洋横断にかかる予想を想定より短く見積もって説明していた。水夫が嫌がって集まって来ないことを危惧したので。

サンタマリア号は7週間も海の上、霧が晴れると同時にやっと緑豊かな陸地にたどり着いた。記念すべき1492 年 10月12日。そこはカリブ海に浮かぶジャングルの島。新大陸の発見、そしてスペインによるコンキスタドール(征服戦争)の時代の幕開けである。

ヨーロッパでは想像もつかない初めて見る鮮やかな大きな鳥たち。原住民とのファーストコンタクト。まるで異星人の来訪のようだ。
先住民たちは槍を構えて現れた。とりあえずコロンはスマイルして友好の印を見せる。異世界の邂逅は先ずは平和的な接触を果たした。

数ヶ月間この島を探検したあと、船員の半数くらいを駐在員として島に残してコロンはいったん帰国の途につく。が、2度目の航海で島に戻ると駐在員たちは全員虐殺されていた。やられた!

しかし、冷静になってみればあの先住民たちも殺されているではないか。どうやら近くに敵対的なもう一つの先住民族たちがいて、襲われたのだ。が、この事件をきっかけに事態は不穏な方向へ舵を切る。

スペインは植民・開拓事業をスタートさせ、先住民を奴隷労働者として使役して砦や都市を建設することになる。現在、中南米にある街並みはこうやってつくられたんだね。

コロンと部下たちは諸々の方針の違いからお互い険悪な関係になる。
それに黄金を手に入れる!と豪語したものの、この地では資源には恵まれず、“投資家”の皆さん方を満足させることはできない。実利的・ビジネス的には今回の航海は失敗に終わる。
コロンは新世界発見の歴史的快挙を成し遂げたが、抱いていた夢にまではあと一歩届かなかった。

コロンがインドだと思った地はインドではなく、アメリカ大陸「付近」の島々を発見したに過ぎない。
アメリカ「大陸」を発見したアメリゴ・ヴェスブッチの方が評価されることになる。そして新大陸の名はコロンにあやかって「コロンビア」……とはならず、アメリゴにあやかって「アメリカ」と命名されるに至った。
コロンの存在はしばらくの間、歴史の影に忘れ去られてしまうのである。切ないね。

しかし、やがて成長したコロンの息子が亡き父の冒険譚を書き残してくれたお蔭で、クリストファー・コロンブスの名は現在、世界の誰もが知ることとなったのでした。おしまい。

ちなみに、コロンの子孫である人がスペイン海軍の偉い提督になったそうだ。割と最近の話らしい。
Balthazar

Balthazar