すずり

E.T.のすずりのレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
4.3
【受賞】
第55回アカデミー賞-作曲賞、視覚効果賞、音響賞、音響編集賞
第40回ゴールデングローブ賞-作品賞、作曲賞

【概略】
憎まれ口を叩きながらも仲の良い三兄弟の次男エリオットは、ある日家の倉庫で不思議な生物と出会う。
二足で歩く珍妙な見た目のその生物は、不運にも地球に置き去りにされてしまった宇宙人(E.T.)なのだった。
大人たちが組織ぐるみでE.T.を捜索する中、果たしてエリオット達はE.T.を守り切れるのか...
というお話。

・・・

【講評】
もはや語るまでも無い、スペースオペラの大傑作。
心優しい少年と、置き去りにされてしまった宇宙人との暖かい交流を描いたジュブナイル映画である。

本作はエリオットという1人の少年の視点がメインになっており、物語の途中までは母親以外の大人達は表情どころか顔すらも映されていない。
これは、色眼鏡をかけずにETを1人の友達として捉える少年達と、実験動物として扱う冷酷な大人達という、一種の対立構造になっている。
その最たるシーンが、エリオット達の家に物々しい宇宙服を身につけた研究者達が入り込んでくる所だ。あの、なんとも言えない不気味さや、無機質な画面の構成は観ていて思わず息を呑んでしまうような緊迫感を演出していて、非常に印象的。
ただ、本作ではその後にエリオットと対話する1人の理解ある研究者の顔がアップで映り、"大人"による理解がもたらされる予感を観客に与えている(この人物は最後の別れまでをただ静かに見つめていた)。

本作はこういった一つ一つの描写がとかく丁寧であり、まさしく巧みな作りをしている。
また、音楽の力も相まって、観客達に子供時代の純粋な優しさや好奇心といった感情までも思い起こさせてくれる。
子供から大人まで、本当の意味で楽しめる素晴らしい作品。

【総括】
名匠の手によって描かれる、未知の生物と少年との心の交流を描いたジュブナイル映画。
紛うことなき名作。
すずり

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