ぼるびっと

マンディンゴのぼるびっとのレビュー・感想・評価

マンディンゴ(1975年製作の映画)
5.0
タランティーノのジャンゴを観た後にこちらをみてしまったことを後悔する、非常に価値のある映画です。何が価値あるかって、空気を吸うように黒人を家畜扱いし、魂がないと断じ、時に簡単に彼らを残酷な運命に突き落としても平気でいられるこの時代の、白人の黒人に対する認識と、南部アメリカに根差していた性差別や障害者の肩身の狭さといった、アメリカの隠し続けたいであろう暗部と人間が抱える人種を越えた問題を余さず、静かにみせてくれているところ!
裕福な農場主が披露する数々の暴虐も目に余りますが(この映画のパッケージのシーン、意味がわかって戦慄しました)、農場主の息子が終盤にとる行動には、越えられない偏見や因習の壁を感じ、もしかしたら彼なら黒人に歩み寄れるかも…という淡い期待を粉々にされて、悲しくてやりきれない気分にさせられます。彼がみせた優しさに、この映画の精一杯のフィクションを、ラストの豹変に過酷な現実をみせつけられます。
差別という行為や概念が、かなり高次の段階での問題なのではと思わせる、名作です。
それにしても腹の立つキャラクターがのされて全然気が晴れない映画は久し振り…