青二歳

エトワールの青二歳のレビュー・感想・評価

エトワール(2000年製作の映画)
5.0
バレエは観たことないからと敬遠する人にも、近代的文化行政のモデルとして観て欲しい。

国立バレエ学校という制度は、つまり世襲制ではないということ。一方、国家が予算をもち、芸術の擁護者となること。

明治維新により多くの芸能がついえる中、欧州の文化行政に衝撃を受けた岩倉具視は能楽会を設立した。資金は政府でなく華族の援助。
歴史の中、常に芸術・芸事は大衆と体制の狭間に立つ。徳川の式楽となったことは能楽にとってよかったのかどうか。瓦解後は家禄を奪われ橋芸者として仕舞いを舞い(路上パフォーマー!)、小銭を稼いだ宗家もあった。日中戦争の際には不敬を理由に大原御幸が上演禁止となる愚行。

文化行政の予算が乏しい日本において、今なにがクールジャパンだ!体制の中にありながら裁量を有するパリ・オペラ座の誇り高い姿と、(公務員に準ずる)団員たちのアーティストとしての尊さ。

もちろんパリオペラ座も長い歴史の中で多大な不遇を経験しているし、いまも環境は変わってきている。
芸事・芸術とパトロネージュについて考える契機として良作のドキュメンタリー。
青二歳

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