猫髭公爵

空の大怪獣 ラドンの猫髭公爵のレビュー・感想・評価

空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画)
3.0
誰にも頭を垂れぬ空の怪獣王の最初で最後の主演映画。

ゴジラシリーズで名を馳せている怪獣・ラドンの初出演作品。
ゴジラの作品によりサブポジション役の印象が強いが、主演である本作では単体で映画を成り立たせる程の脅威を見せつける。

怪獣王として認知されるゴジラに比べるといろいろとパッとしないように思えるラドン。
しかし本作ではゴジラ以上の災厄とも思える破壊っぷりを見せつける。
ラドンが飛ぶだけで辺りの建物は吹き飛び、街は瓦礫の山と化す。
音速で空を自由自在に飛ぶため迎撃も困難である。
怪獣としての強さで言えばゴジラの方が上手だろうが、人類の脅威としてはラドンの方が上だろう。
ラドンの飛翔により破壊されていくミニチュアの街並みを見ているとその絶望感が伺える。
ていうか細かく丁寧に手作業で作られたであろうミニチュア模型達が破壊されていく様は爽快感より悲壮感を感じてしまう…。

ミニチュアを使っての破壊シーンは当時の特撮の見所であることはわかるが、長々と続くそれらのシーンは正直なところクドく感じてしまう。
中盤の福岡でのシーンはまだ良かったが、終盤の爆撃シーンに関してはさながら余った手持ち花火の消費作業に思える程の惰性感がある。
ストーリーに関しても導入部は引き込まれたが、以降の展開については途中で考えるのに飽きたのかと思う程粗い。
ラドンより前に出てきた巨大昆虫・メガヌロンの扱いもちょっと勿体ない。不気味さで言えばラドンに勝る存在なのに…。

当時としては受け入れられる作風だったのだろうが、現代の感性だと首を捻る作品かなと。
ただラドンの福岡破壊シーンは良いと思うし、劇中の怪獣についての解析も聞いていてそそられるものはあるので、全てが受け付けられない出来ではない。
少なくとも現代でも魅力的に思える造形の怪獣を生み出しているわけであり、特撮作品としては良作なのだろうと思う。
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