たかな

さらば、わが愛 覇王別姫のたかなのネタバレレビュー・内容・結末

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

以前から気になっていた(ポスターのヴィジュアルが良過ぎたため)映画。終始、胸が苦しくなるほど美しい映像。以前、坂東玉三郎の「書かれた顔」を見た時も思ったが女装故の、震え上がるほどの、どこか恐ろしいまでの美しさ=エロスをレスリー・チャンの仕草や振る舞い一つ一つからビシビシと感じた。どの登場人物も純粋ゆえの重さ、重さゆえの純粋さが通底していて、時代のうねりとともに、やるせない破滅へと向かっていくのが辛い。自己批判のシーンは、本当に息が詰まるほど苦しかった。あれだけ愚かさややるせなさを感じさせられてなお、石頭の前で小豆が自殺するラストシーンは(劇中劇からもなんとなく序盤から予想されたが)、「どうして彼の前で」という悔しさと、「やはり彼を愛していたんだな」という納得との間で、観客である私自身もやるせなさを感じさせられた。コン・リーの役がとてもいい。遊女であり(小豆を幼少期に捨てた母もまた遊女だった...)石頭の心を射止めた彼女と、レスリー・チャン扮する小豆の掛け合いには、何重かの思いが交錯し続けた。それでも小豆に対する母性的愛のようなものも垣間見えて、唸るほかない。

美しいものはいつも哀しい。
胸糞とは決して言わないが、見ていて決して幸せな気持ちになる映画ではなかった。それでも、間違いなく心に残る作品ではあった。
たかな

たかな