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さらば、わが愛 覇王別姫のうなぎネコのレビュー・感想・評価

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
4.7
約30年間、映画館でかかる度に観ましたが
日本最終上映(フィルム?)との事で
さらば「さらばわが愛」してきました…

***
生涯ベストの1つ。
公開時(14歳)に観て、ミニシアター好きになるきっかけになった作品。長文です

あの頃は、華流全盛期
レスリーは俳優というより、華流アイドル的なイメージだった。
(彼の自殺は、リバーフェニックスの時と同じくショックでした)

今観ても撮影・色・音楽が美しい作品だけど
ただのシノワズリのメロドラマじゃない。
この映画がスゴイのは、中国政治の「総括映画」を
大陸と香港が共同製作し、世界的にヒットした点。
そらパルムドールでしょう…。

ダイナミックで圧倒的スケールの中国近現代史を、知っていてこそ。
主権が目まぐるしく変わる激動の時代を
「清朝(伝統)由来の京劇役者」の人生と重ねて見る面白さ。
昔はあまり気にしてなかったけど、母と同じ「女郎」であり
歴史に翻弄される「女」が、とにかく強かで美しい。
中国の歴史って、「女不遇」だけど「不在」ではない。

ちなみに、原作では香港も重要なファクターだけど
映画は大陸に絞ったが故の儚さが良い。

中国本土では上映禁止になっていたそうで、
「同性愛的描写」って事になってるけど、
明らかに政治的な理由だろ…。
「日本軍」の描かれ方も、ちょっと珍しいよね。

多くの犠牲の上に輝く古き善き?中国の伝統美(=蝶衣)が、
政治によって利用され蹂躙され失われていく儚さ。
炎に舞う蝶みたいな、紅い哀しい美しさ。
しかも、他国の攻撃ではなく、自国の争乱によって尊厳を奪われ続ける
誇り高き美しい文化の儚さ…。

「青木が存命なら、京劇を日本に持ち帰ったでしょう」
事実、戦前の日本で、京劇(梅蘭芳)はブームになった。
そして今では昔ながらの京劇は絶え、すっかり姿を変えた。

大陸には、胡同の街並みもほとんどないそうです。
清朝スタイルの中華趣味が憧れなので、哀しいなぁ…。
(映画の中でも、古き伝統は台湾に逃亡してたよね)

タイトルロールの二胡?胡弓?の音色で、もう泣いてしまう。
美少年時代の小豆は、自分と同世代のはずなので
今は美しいオッサンになってるのかな…?

トラウマ的に(痛みも美しさも)身体に刻み込まれるようなシーンが
いくつもあるよね。

***

変なカメラワークもカット割りもあるし
その後、陳凱歌監督にはガッカリしてばかりなので
コレはレスリーを中心にした、奇跡(まぐれ)の映画なんだろうな…
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