ゆうし

グブラのゆうしのレビュー・感想・評価

グブラ(2005年製作の映画)
4.2
同監督による『細い目』の続編。

前作がオーキッドとアーロンの二人の世界に焦点を当てていたのに対して、今作は前作の周辺人物に娼婦と聖職者たちを加えた群像劇である。

今作の一番の特徴は、『細い目』のアーロンにあたる詩的な語り部がいないこと。だから各登場人物はそれぞれ劇的なことを経験するんだけど、それはあくまで詩ではなく僕たちにも起こりうる普通の、本当っぽいこととして描かれる。
前作をアーロンの言語的リズムに乗っ取った詩的表現とするなら、今作は表現的な意味での予定調和が存在しない散文的世界。

そのばらばらに散らばった表現を一気に回収するエピローグがこの映画のすべて。このラストシーンだけがこの映画で唯一の「現実的にあり得ないこと」で、このシーンがあることで、ばらばらに存在していた出来事が監督であるヤスミンの叫びに昇華される。

前作とセットで観て欲しい。いい映画。
ゆうし

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