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座頭市千両首のodyssのレビュー・感想・評価

座頭市千両首(1964年製作の映画)
3.0
【そろそろ役者の使い回しが】

勝新太郎主演による座頭市シリーズ第6作。監督はこのシリーズ初登場の池広一夫。ウィキペディアによると、本来池広は第1作を監督するはずだったのが、事情があって同時期に撮影された他の作品に回り、ようやくこの第6作で監督を務めることになったとか。

筋書きの上で前回までとつながりのあるのは、国定忠治が出てくること。忠治は第4作で登場していて座頭市とは知己であるという設定です。ただし俳優は、第4作が名和宏だったのに対し今回は島田正吾になっており、島田の登場場面は前半かなり多くなっています。俳優としてすでに名声を得ていた島田に配慮したためかもしれませんが、進行の上では少しここで停滞している印象があります。

俳優では、第4作に続いて坪内キミ子が出ていますが、役の上では連続性はなく、演じているのは全くの別人。また勝新太郎の実兄・城健三朗(若山富三郎)も第2作に続いて再登場していますが、むろん異なる役。むろんというのは、第二作では彼は最後に死んでいるからです。

シリーズが第6作まで来て、そろそろ役者の使い回しが始まっているのかな、という印象。

さて、今回は百姓の上納金千両が奪われるという騒動に市が巻き込まれるお話です。

飢饉で苦しんでいる百姓が、苦労して代官への上納金千両を集めたのに、それが何者かに奪われてしまう。国定忠治の配下のしわざではないかという疑いが浮上し、忠治とつながりのある座頭市にまで百姓たちは嫌疑をかけます。忠治と自分の汚名を晴らすために座頭市が立ち上がるという筋書き。

途中、長谷川待子が市と一緒に岩風呂に入浴する色気シーンもあり。ただし、前作までのように市とヒロインが本格的な恋情を、というような設定にはなっておらず、総じて女優の役割は小さいものにとどまっています。

筋書き全体はまあありがちですが、パターンに逆らうことなく進行するところがシリーズ物のいいところでしょう。最後には市と城健三朗の対決シーンもありますし。

DVDについている予告編を見ると、本編とかなり違うんですよね。違う場合もあることは分かっていますが、この作品の予告編を見ると総じて説明的で、全体の筋書きや人物配置を観客に知らせる役割を担っていることが分かる。実際に完成した本編はこれほど説明的ではなく、自然に流れています。作品にもよるでしょうが、予告編ってのは本編から切り取って作るのではなく、予告編のためだけに役者に演技させて作るのかなあ、と思いました。
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