一休

ふたたび swing me againの一休のレビュー・感想・評価

ふたたび swing me again(2010年製作の映画)
5.0
小学校5年の時に、父親に【ザッツ・エンタテインメント】に連れて行かれ、映画に取っての音楽とダンス・ステップの大事さを感じ取ったオイラなので、それ以後に観た映画では常に音楽を感じ取っていたつもりだ。
この【ふたたび swing me again】という映画は、その前に観た映画の宣伝で知った時に、その音楽とステップの良さを感じたもので、上映終了に間に合うかと思っていたのだが、なんとか2010年12月の映画ファン感謝デーに観に行くことが出来た作品だ。

昭和初期の文化港湾都市神戸で、ジャズバンドを組んで明日を夢見る若者・健三郎が、当時はらい病と呼ばれたハンセン病に冒された事で隔離施設に入れられ、50年を経て家族の元に帰って来る。しかし、ハンセン病への偏見は未だに無くならず、しかも50年離れていた家族との融和もままならず、自らの存在意義を求めて、かつての仲間の元を訪ねてあるくロードムービーだ。その健三郎を、たまたま祖父である健三郎が若い時に吹き込んだレコードを聴いたことでジャズメンを目指す孫の大翔が付き添い、自分の祖母も同様にハンセン病で隔離されていたという韓国人の介護師・ヨハンが見守る。
ストーリーは、現在の健三郎に過去の思い出をオーバーラップさせながら進むのだが、画面の色や光の加減を上手に変えているので、こういったロードムービーを苦手にする人にも分かりやすいだろうし、また50年前という感じを良く捉えさせてくれる。
当時のバンドメン全てに会った健三郎が大団円を迎えるというエンディングでは無いのだが、オイラは男のエンディングとはたった一人で迎えるものだと思っているので、幸福感が少ないと思うかもしれないが、この映画のエンディングには至極納得した。

ハンセン病患者というだけで世間から隔絶させられた人生を送らざるを得なかった方々を扱うのは、たいへんだったと思う。しかし、その設定を元ジャズメンとし、ロードムービーに仕上げたことで、時代とその背景をスムーズに理解できたのではなかろうか。
主要な役を演じるのは、ボードビリアン・財津一郎さんをはじめとして昭和のエンタテイナーを揃えており、もちろん劇中の音楽を弾いているわけではなくとも、楽器を弾くという演技は完璧だ。
そりゃあ、クレージーキャッツの犬塚弘さんや佐川満男さんはもとより、エンタテインメントの何たるかを知っている藤村俊二さんだから当たり前っちゃ当たり前である上に、渡辺貞夫さんまでサックスを吹いてくれるなんて、考えて見ると贅沢な映画に仕上がっている。
もし谷啓さんがご存命なら、藤村俊二さんの演じられた役は谷さんが演じられたはずだとは思ったのだが、もちろん大会社の会長としての役は藤村さんにピッタリであった。
この大会社は、見るからにビアノのタケモトで、うんちく奴隷に「あれ絶対、タケモトだよ。」と小声で言ったのが、エンディングロールに出てきた時には、ちょっとドヤ顔になってしまった。w

そのエンディングロールでは、大翔役の鈴木亮平が主演となっているのだが、この映画の主役は明らかに健三郎役の財津一郎さんであることに間違いはなかろう。しかし、次代の若者に道を付けてから歩かせるという昔気質の肥後もっこすエンタテイナーである財津さんの配慮だったんだろうなぁと思わずにいられない一休であった。
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