祖国を愛するという素朴な感情の絆で結ばれた同胞や家族が、ほかならぬその愛国心ゆえに、互いに殺し合わなければならないという悲劇。
極めてシンプルな物語だけど、構造として、シェイクスピア悲劇のように、プリミティブでありながら完成された普遍性、力強さがある。
タイトルと同名曲に示される「麦」は、1798年、イギリスの植民地支配に対して蜂起したアイルランド反乱軍が食料としてポケットに忍ばせた大麦に由来するらしく、戦死者の無碑銘墓に育って実をつけ続ける様子は彼らの不屈の象徴でもあるそうな。
全体を覆う静謐なムードと荒涼とした草原の情景は、「同胞殺し」「家族殺し」への悲哀の表情とともに、若者たちの崇高な精神への敬意を確かに湛えていて、そこに得も言わず心を打たれるのです。