かきぴー

狂い咲きサンダーロードのかきぴーのレビュー・感想・評価

狂い咲きサンダーロード(1980年製作の映画)
4.6
うわぁぁぁぁあ!
マジで面白かった。
この映画について言う時に「卒業制作なのに」とかいう形容詞を使う必要がないレベルで完成されている。
公開当時にリアルタイムで観てたら発狂してるだろーな。

1.いちいち余計でかっこいい
2.工夫された演出
3.全く違うのに同じ
4.徹底される「社会」
5.だからこそ最高のクライマックス


1.いちいち余計でかっこいい
ルックがかっこいい、というところがまずこの映画を観て思うことだろう。一歩冷静になると余計でしかない数々のアイテムが、のめり込んでいる我々には究極的なカッコよさにしか見えない。その非効率的な武器はなんだ、なんの仮面なんだ、その格好はなんなんや…そんな大人な意見にはf*ckだ!うるせぇ、カッコいいだろ!と監督と一緒に言いたくなる。私としては、あの謎の仮面、ゴーグル、バズーカーに、謎にクソ強い銃は大好きだった。しつこすぎず、自慢気でもない点も素晴らしい。

2.工夫された演出
そして、私がこの映画を観て素直に楽しめた理由として、飽きないように楽しい演出がたくさんあった点を挙げたい。イカしたタイトルロゴにがまず好きだった。そして、これはストーリーとも伴っていたが、音楽の使い方はやっぱり素晴らしかった。音関連でいうと、シーン1の「型破り感」。なんだこのシーン⁈と思うが、まぁかっこいいので、心を掴まれてしまう。その後も音だけが聞こえてくるとどんどんテンションが上がる、うめぇな。細かい演出でいうとカメラワークがかなり工夫されていて好きだった。円状に話し合っているところをぐるぐる回りながらどんどん回転数上げてくシーンが奇抜で印象的。斜めの角度で撮るカットもかなり多かったが、違和感なく、迫力があって、観ててワクワクする。どういうのが面白いか?、そんな問いを常にしているような(実際は知りませんが)石井監督には素直に尊敬しかない。

3.全く違うのに同じ
特に自分なんかは、やんちゃもしてこなかったし、むしろ大人しいタイプではあるから暴走族なんぞ正反対の人種だ。しかし、この映画はとてつもなく共感できた。常に抱えているある種のストレスや生きづらさは誰しもが抱えているだろう。詳しくは後述するが、それは明らかに「社会」への反発意識だろう。とは言っても…なんだかんだ自分なんかは大人しく生活し、社会に適応してるわけです。だからこそ!映画の中だけでも!ジンさんになってもいいよね!ってことだと思う。俺だって自由気ままに暴れたい、という抑圧されたものへの発散意識を良い形で発散してくれるのがこの手の映画だと思っている。映画なめんなよ!

4.徹底される「社会」
ジンをここまで苦しめ、我々観客にブラストレーションを溜めるものの本質的なものは何であろうか。それはズバリ「社会」であり「大人」でもある。「俺たち大人になろうぜ」「愛される暴走族になろうぜ」「君たちは私が面倒を見よう」などなど正論をかましてくるあいつらは、「社会」の申し子であり、ジンは自由で社会や大人にコントロールされてたまるかという人物。どっちがかっこよくて、俺たちの本心がどっちを求めているかはこの映画を観ればわかるだろう。
ケンさんの人生ゲームを楽しそうにやるシーンを思い浮かべて欲しい。ダッサい!ごっつダサい!。ロックと軍歌、特攻服と軍服を比べてみたら、どちらがダサいかわかるだろう。そして大人の悪いところを象徴するかのような、あの巻き込み銃撃。
「そんな社会に取り込まれるものか」ともがき自由気ままに走りたいジンさんもとうとうダメになる…

5.だからこそ最高のクライマックス
そのまま自殺してエンディングロールが流れるような映画がありそうな感じがするが、この映画はそんなことはしない。町山さんの言うところの「真のストレス発散」だろう。物語に入り込み、本質的な部分で共感し、最後は映画だからこそできることをやり観客の真の快感を得る。この映画のクライマックスで起こることは、明らかに非現実的だが、心の底から「よっしゃあ!」と叫んでいる自分がいた。なかなか味わえない素晴らしい体験でした。

そしてあのラスト。超絶かっこいい。俺もにっこりしちゃうけど泣ける。
かきぴー

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