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おとうとのasayowaiのレビュー・感想・評価

おとうと(1960年製作の映画)
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市川崑監督の代表作、というよりカメラマン宮川一夫のひとつの到達点。銀残し云々以前にやはり雨ではじまるファーストショットから次第に画調が冷たく暗くなっていく。銀残しによって画面のコントラストが強調されるんだけど病室の壁がまあ無機質に不気味に映ること。そうか、後半の病室のシーンは基本的に暗い部屋と医師看護士の白衣と灰色の壁が貴重となるモノトーンの映像。カラー映画であることを思い出させてくれるのは岸恵子の着物だけなんだよな。
田中絹代の見事な継母っぷりもさることながら、岸恵子のカテゴライズしにくい独特な魅力もいい。継母にいびられるかわいそうなシンデレラって感じじゃなくどこか不遜なところがありつつ、抜けてる間抜けっぽさもあり、それでいていじらしい。この脚本だとげんちゃん役の女優の出来不出来でだいぶ印象違うと思うんだけど当時28歳の岸恵子がよく演じたなと。逆にいえば溌剌さを欠いているからこそげんちゃん役が務まったともいえるかもしれないけど。
いやしかし、幸田文の原作通りなのかもしれないけどラストの看護士の洗濯物が部屋干しされている和室のインパクトたるや。名カメラマン宮川一夫渾身の一作。
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