YUMI

おとうとのYUMIのレビュー・感想・評価

おとうと(1960年製作の映画)
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子供の頃、TV(当然民放アナログ放送w)で観た記憶があるのですが、凄く印象に残ってました。
それでも細部までは覚えてなかったのですが、いま観ると、とても危ういと言うか、なんかハラハラしますね。
というのも。この姉と弟が、きょうだいというより恋人同士に見えてしまうから?
姉に言い寄る男たちを、尽く弟が撃退?していくのも、姉を守るためと言うよりも、嫉妬からのように思えてしまう。
それもそのはずで、二人の暮らしは、家族に関心のなさげな父親と、後妻である母親との冷ややかな生活。その継母はリウマチを患っており、家の事はほとんど姉のゲンに丸投げ。
しかも自分の事を憐むあまりか、宗教にハマり、もはや狂信的とも言える言動には取り付く島もない。
家の中がこんな状態だから、姉が嫁に行ったりしちゃえば、弟の方はたちまち居場所を失うわけですよ。しかもこの弟、何かと問題を起こしては放校処分になり、家の外でも居場所がない感じ。
姉の方も姉の方で、女学校にも友達一人いないみたいで、とても孤独な様子。これは家の事を一手に引き受けざるを得ない立場から、仲間と遊ぶ暇なんかないせいもあるんでしょう。
この姉弟が取っ組み合いの喧嘩をするシーンは、争っていると言うよりは、どうにかしてお互いに触れようとしているようにすら見えました。
そんな二人の危うい関係?を断ち切ったのは、弟の発病でした。
当時は非常に厄介だった結核と言う病に侵された弟に、姉はもう触れる事ができない。
病床の弟が、うどんを食べさせて貰いながら、一緒に食べようと姉にせがむシーンには、こんな事になる前に、もっと姉さんに触れたかったという無念のようなものを感じました。
あはは、ちょっと深読みしすぎかなあ? これは、姉役の岸恵子さんの類いまれな美しさと、役柄の歳に見えない大人びた色気のせいもあると思います。
私にはきょうだいがいないからよくわからないけど、ねーちゃんがこんなに美人だったら、さぞや弟は落ち着かないだろうなと。
しかし、結果としては、弟の発病が家族をひとつに結びつけ、あの母ですらなさぬ仲の息子の臨終には涙する。
弟が息を引き取った瞬間、気を失いながらも、すぐに起きて立ち働こうとするゲンの健気さには、家族が死んだ時すら泣いてばかりいられない「主婦」の大変さを突きつけられた気がしました。
原作小説も、多分昔読んだと思うのですが、改めてまた読んでみたいなと思いました。
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