まさや猫かぶり

たそがれ清兵衛のまさや猫かぶりのレビュー・感想・評価

たそがれ清兵衛(2002年製作の映画)
4.0
藤沢周平原作・山田洋次監督作品のひとつで、個人的に数少ない邦画で評価する映画。
舞台は幕末の庄内地方、海坂藩という架空の藩。御蔵役を勤める井口清兵衛は妻を病で亡くし、痴呆の母親と娘2人を抱え質素な生活を送っていた。仕事の同僚との付き合いも控え、夕暮れ時の終業の太鼓の音と共に帰宅し、内職と家事に追われる彼を人は「たそがれ清兵衛」と陰口を叩いていた。
ある日、友人の飯沼倫之丞は嫁いでいった妹の朋恵が酒乱の夫:甲田豊太郎に暴力を振るわれるため、離縁させたことを打ち明ける。清兵衛が帰宅するとそこには幼馴染の朋恵が家事をし娘と遊ぶ姿があった。
その頃、飯沼家には離縁させられたことに腹を立てた甲田が酒に酔い、倫之丞に果し合いを申し込む。剣に覚えのない倫之丞に代わり清兵衛は代役を買って出る。翌朝、真剣を持った甲田と決闘するも、木刀の小太刀一本であっさり倒し、城下にその剣の腕前が知れ渡ることとなるのだが…。
リアリティーをとことん追求した作品。全体的に暗く、身分の低い者には小汚い格好をさせ、訛りにもこだわり当時の環境を出来るだけ再現しようとしている。
決闘のシーンも迫力があり真剣での打ち合いは鬼気迫るものがある。ラストの娘の回想と井上陽水の主題歌を流す演出にはさすがだ…と感服させられ、何度観ても涙を誘われる。
藤沢周平の原作小説も江戸時代の世界観や価値観が読みやすく書かれていて面白い。