ただ何気ないひと時を愛す。
そのひと時をある人は憐れみに伏す。
その人にとっては愛おしさに溢れた時間でも。
人は理解できぬものを切り捨てる。
人は己が理解できるものへと他者を型にはめる。
理解されえぬことは苦しい。
だが、一握りの誰かとその愛を分かち合うこともできる。
その一握りを持てることの素晴らしさをしみじみと感じさせられた。
そして、分かち合える相手は、
思わぬところにいることもまた人生なのであろう。
場面の1つ1つから流れ出る雰囲気に、
こちらが飲み込まれていく。
果たし合いの場面は仄暗くも、
気迫が伝わる素晴らしいひと時だった。
田中泯さんの悲哀に満ちた武士の姿に、
心揺さぶられてゆく。
舞のような演技は圧巻。
日常にあるささやかなものを大切に抱えようと思える一作。