2級蘊蓄士

たそがれ清兵衛の2級蘊蓄士のレビュー・感想・評価

たそがれ清兵衛(2002年製作の映画)
3.0
現代社会において、デキる男とやさしいイクメンは両立しない、と橘玲はマインド・ブラインドネスを引きながら解説をした。
https://www.tachibana-akira.com/2020/02/12210
しかし、ごく一部で例外もある。
例えばスポーツ選手がそれだ。
仕事の良し悪しを決めるのが身体能力という社会性から遠くにあるもののため、パフォーマンスとは相関が低いとも言える。すなわち家庭第一でやさしいけど一流アスリートというのは背反しないことは想像に難くない。
この構図にうまく落とし込んだのが太平の下級武士であり、藤沢周平や山田洋次の白眉たる所以なのである。
太平が崩れかかる時でもない限り、剣を抜く=身体能力を発揮させる機会はない。なにせ、当時のお武家の仕事は、いわゆるお役所仕事であり、身体能力は重視されないし、ゆえに、どう見たって井口は出世していない。
この状況下で成果をあげる千載一遇のチャンスが果たし合いという、仕事とは別次元の道場で培ってきた武士のライフワークなのだ。しかもそれは武士としての心得であったのだから都合がいい。そして、朋江が井口のようなうだつの上がらない男に惚れるのも、先にあげたコラムを読むと説得力がある。

気づいたら正座して見てるほど良い作品。
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