土偶

楽聖ベートーヴェンの土偶のレビュー・感想・評価

楽聖ベートーヴェン(1936年製作の映画)
4.1
私はベートヴェンが好きだ。どれくらい好きかというとウィーンまで墓参りに行ったくらい好きなのだ。
この映画は大好きなベートーヴェンの中年からその生涯の最後までを描いたものである。
思い入れの強い題材の映画は微妙に見えることが多いので観るのに二の足を踏んだけど観ずにはいられなかった。
最初はピアノを弾いているのになぜかオーケストラが聞こえたり、それ史実と違うやろーなシーンがあったりやたらと大げさな演技で微妙な気がしたけど見ているうちにだんだん面白くなってきた。
今となってはアントニー・ブレンターノでほぼ確定されている「不滅の恋人」がアントン・シンドラーの言ったジュリエッタとして話が進むのはやっぱり違和感があったけど、途中でロマン・ロランの『ベートーヴェンの生涯』?の一説の引用を見てこれはベートーヴェン神話の一つなんだなと思うようになった。
神話なら誇張も矛盾も創作も許容されるのだ。
これは確定されたベートヴェン史を描く作品なのではなく一つの同人誌的作品なのだ。
彼の最期のシーンでは諸説ある「残念、残念 - 遅すぎた!」「喝采を、諸君、喜劇は終わった」「拳を天に振りかざした」がすべて採用されていたのはどれか一つに決めてしまわない誠意のようなものを感じた。
「ハイリゲンシュタットの遺書」の時点で31歳やねんから老けすぎやろーーと感じつつも思いのほかベートーヴェン役がしっくり来ているように見えた上に音楽もすべてが彼の作品で埋め尽くされていてよかった。ベートヴェン好きにはたまらないだろうと思う。

しかし、なんで昔の映画は同じ音楽やフレーズをやたらと使いまわすのだ??
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