楽聖ベートーヴェンの作品情報・感想・評価

「楽聖ベートーヴェン」に投稿された感想・評価

アベル・ガンスと言えばサイレント時代の長大な作品が有名だが、この作品は限定的ながらそのサイレント時代の代表作より演出の秀でたものとなっていた。

ベートーヴェンを取り扱った映画だけあってこの作品は音の使い方がめちゃくちゃ上手い箇所があり、一部サイレントにしたりして音が聞こえなくなったベートーヴェンを追体験させるような描写はベートーヴェンの絶望に共感を覚えてならなかったし、一方その絶望から復活しての演奏描写では逆にピアノからベートーヴェンが想像したかのようなオーケストラ演奏が流れてくるみたいになっていて、作中で聴いていた人物同様の感動を味わうこととなった。

しかしそこ以外はオーソドックスにベートーヴェンの晩年を題材にして描いた伝記もの程度の印象で、普通に良いシーンもあったのだけれど上記のシーンがべらぼうに良かったせいで霞むところばかりだった。

全体的にも半サイレント的な作りになっていたのならアベル・ガンス作品で一番の傑作になっていたかもしれないと思うと、結構惜しい映画だった。
pika

pikaの感想・評価

4.5
ほぼ見せ場しかないとか言いたくなるレベルの濃度!叙情感が半端ない。ベートーヴェンの伝記映画なのにこれぞフランス映画!ってな悲恋ドラマの割合も強くて何がメインなのかわからなくなってくるけどそんなんどうでもよろしい!ってくらい良かった。中盤から涙がせり上がって鼻の奥ツーン状態。
誰もが知ってる歴史上の偉人ではあるが人柄に関しては知る由もない対象の人物の紹介が上手い。女の子たちがキャッキャウフフしているシーンからずんぐりむっくりな大男がこちらに尻を向けフンフンと鼻歌歌ってるシーンへジャンプする意表の突き方、卵を投げつけ大笑いする流れ、隣家へ入って無言で空気を変えるシークエンスなど、見始めると秒で惹かれてしまう人物描写がめちゃくちゃ良い。
耳馴染みありまくりな曲なのに鮮烈な感動が湧き上がるようなタイミングで流れるベートーヴェンの名曲の配置が良い。運命の多用はちと笑えるが、どれも印象的に耳に残る。心底素晴らしい音楽だなと改めて映画が引き立てて魅せる。
難聴になってしまうシークエンスが最高。画で語り音で語る名シーン。巻き戻して見てもまた感動できるくらい良い。音を失い、音楽によって立ち直るということを映画だからこそな叙情性溢れる説明で見せる。素晴らしい。
ベートーヴェンを演じた役者の顔演技。アップ長回しに応える名演技。
晩年は涙無しには見れない。思い出すだけで泣く。史実かどうかはわからないけどフィクションアレンジがあったとしてもベートーヴェンという偉大な存在に惹かれ、遺した功績である音楽を聞きたいと思える余韻に包まれたので細かいことはどうでも良い。見終わって第九聞いてたら更にジワジワきました。
古いせいか切られたのかわからないけど繋ぎ目が変なところはあるしラストはイマイチだったが何日か余韻が残るくらい良かった。伝記映画としても音楽映画としても傑作。音楽そのものやエピソードで感動させるのではなく映画で感動させている、これこそ音楽家の伝記映画だろう、と思えた傑作だった。
Mai

Maiの感想・評価

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ベートーヴェンが聴力を失ってから庭を歩くシーン、語彙力が乏しくて表せないけどとても良かった。映像の撮り方・見せ方、役者の表情。最後は悲しいけれど、ある意味芸術家らしく胸を打たれた。


以下完全に自分用の記録。
女性2人がどちらか見分けにくい笑
最初の「ジャジャジャーーン」の伸ばしの音(音質)に少し不安になる笑
ベートーヴェンはなんとなく少しキュートで、変人と言われる感じや音楽室の肖像画のような感じはなかった(グレートワルツのシュトラウスの方が怒鳴りまくって自分勝手で"変わり者感"はあった)
モテるのに報われない。私も幸せになって欲しかったなぁ。
最後は医者を呼んでくれよー😢

古いフランス映画を見たことがなかったから、見れてよかった。1936年の映画だが、現代を生きる私には本当に1801年のウィーンのように感じて良かった。
これは大傑作。
今まで見た伝記ものでもピカイチの出来。
傷心のベートーベンが風車小屋で一人佇むショットが超絶!

サイレントから移行して間もないので字幕が多々入るが、ショットの強さもサイレントの香りを残している。
失聴したベートーヴェンが小間使いと共に外を歩くときの瑞々しい木々に人々、更にこれらを繋ぐ高速モンタージュ。素晴らしい!!
2人の女の狭間で苦悩するモテ親父…
しかし、とてつもなく不器用…
幸せになって欲しかった。
そしてやっぱり高速モンタージュ。フラッシュバックする記憶…エモいっす…!

あ、あと、劇中はもちろんベートーヴェンの名曲で満たされるも、第9の使い方よ!
cinefils

cinefilsの感想・評価

3.5
サイレントからトーキーへの移行で映画の画面が平板化したのは事実だが、この映画ではサイレント的な映像も多い。(考えてみれば、耳の聞こえなくなったベートーヴェンの主観はサイレントにならざるをえない)

ガンスの売り文句の高速モンタージュがいくつかの場面で出てくるのには笑ってしまう。あと、要所要所での「運命」の使い方も。

冒頭の草原で女たちが喋っている場面、それぞれの空間的な距離が思わず「いい距離!」と叫びたくなるくらい絶妙な配置。