上海十月

証人の椅子の上海十月のレビュー・感想・評価

証人の椅子(1965年製作の映画)
3.8
冤罪の代名詞と言えばこの「徳島ラジオ商殺人事件」だ。開高健が「片隅の迷路」で小説にしている。この本が原作。ちょっと不思議だったのは、永田雅一率いる大映だったからだ。どちらからというと反権力、左翼的に同調する感じでない。完全に右翼。山本薩夫は、ばりばりの左翼だったので・・・プロデューサーが「忍びの者」のヒットと引き換えに映画にしたと。「忍びの者」は、赤旗に連載されていたので妙に納得。お話は、実際の事件をドキュメントタッチで描く前半。その辺は、最近でも観るような再現ドラマのようで今ひとつかなと思いきや、後半冤罪をかけられた女性の甥が全国を駆けずり回り叔母の無罪を一つづつ検証していく。そして国家権力は、偽証を誘導したことを無かったことにしていくため左遷、配置転換を進めて行く。偽証をした少年もこの事件によって翻弄していくある意味ノイローゼではないかと思うが自殺まで思いつめる。後に無罪が確定するこの事件だが54年に発生して85年に無罪と30年の時間はかえってこない。今日も保険金欲しさに娘を殺した人が冤罪で20年かかって無罪になったニュースが報道された。いまだにこのような事件は、起こっているのである。ラストに向かっては、山本薩夫の反権力の怒りが畳み掛けるようだ。吉行和子がまだ若いのにすでにおばさんな役だった。
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