スポック

復讐するは我にありのスポックのレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
5.0
今まで数々の洋画や邦画を観てきたが、犯罪者自身と、それを取り囲む人間の苦しみや憤りや悲しみの心理がこちらに最も伝わってくる良質の作品。
出演する俳優が人間を表現しきっていてすばらしかった。
緒形拳はもちろんのこと、出演陣のなかでも小川真由美が演じる薄幸な女の演技が凄かった。
殺人の犯罪歴の母親を持つがために幼少の頃から世間で肩身の狭い生き方を強いられ、成人してからもその母親のしがみつきが災いして真っ当に生きていけず、仕方なく強欲で自己中心的な中年男の妾となる日陰の薄幸な女を、自然な立ち振る舞いと抑えた表情の演技に心を掻きむしられるほど感情移入ができた。
それとミヤコ蝶々の演技力に改めて感服した。反社会的で世間ではどうしようもない一人息子であっても溺愛し甘やかすどこにでも居そうな善良な母親役の演技と、後半の旦那を寝取られる嫉妬心にどろどろとした怨念をにじませる老女と、対照的で両極端な役柄を自然体でこなす素晴らしい演技力は後にも先にもどの時代の俳優にも演じられないのでは無いだろうかと思ってしまうほどのリアリティがあった。
ジャンルを問わず私の中では人間の闇を描くベスト中のベストな作品。