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復讐するは我にありの海のレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
4.5
なぜ、このおぞましい事件が起きてしまったのか。

この映画は実在の連続殺人事件を題材にしている。事件が起きた背景には、事件に関わる一人一人が、社会の中で積み重ねてきた人生がある。殺人犯の巌は、どのような家庭で育ち、どんな性格で、どんな毎日を過ごしてきたのか。事件のトリガーである父親はどんな人で、どのような闇を抱えていたのか。そして、被害者たちは…。これらの些細な出来事が時間をかけて積み重なり、事件は起こる。

映画内で監督は、事件の背景にあったカルマを丹念に、執拗なまでに描いている。人間は醜悪さや欲深さといったカルマから逃れられない。誰だってカルマを背負って生きてるし、いつカルマが剥き出しになるか、いつ人を殺すか、殺されるかなんて分からない状況にいる。巌も猟奇殺人者でもなければ、快楽殺人犯でもない。どこにでもいる平凡な人間だったはず。この事件は決して他人事じゃない。それを突きつけられているような映画だった。

そして最期の父と息子の対面シーン。
細かく描いた人物描写のおかげで、少ない言葉だけで、お互いのどす黒い感情が伝わった。説明を言葉に頼らない演出は、言葉より感情が伝わるからグッとくる。
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