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原爆下のアメリカのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

原爆下のアメリカ(1952年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

NYのとあるバー。TVキャスターのヴィンス、トラクター製造会社社長、牧場主、上院議員、占い師、若い女性のカーラらがTV放送を見ていると、突然アラスカ大空襲のニュースが飛び込み、次いで敵が米本土に侵攻したという報せが入った。この事態に驚いた彼らはあわてて故郷や職場へ戻ろうとしたが…。

アメリカが某国(どう見ても当時のソ連)から侵攻されて、軍事施設や都市に次々と核攻撃を受け、壊滅状態に。
「もしもアメリカ本土が攻撃されたなら?…」という状況を描いたSFチックな異色の戦争映画
プロパガンダ要素がたっぷりで、Filmarksではとても評価が低いのは納得できるが、個人的にはそれだけではないと感じた。
現代の目で見ると、これもまた反戦映画である。

バーに居合わせた面々も一人、また一人と敵に襲われて犠牲になってゆく。
低予算映画ゆえ、ドラマ部分以外の戦闘シーンは第二次大戦の記録映像を使用している。
当然、核爆発の映像は、アメリカの核実験と我が国に原爆を落とした時の映像。
軽々しく何発も核兵器を使う描写は、日本人としては腹立たしいが、落としたアメリカが攻撃されるので「報いを受けた」感じもしないでもない。

だが、実は全ては嘘。
バーにいた「占い師」の男に皆が「集団催眠」を掛けられて、「仮想体験」をさせられていたというオチである。

劇中では牧場主とその家族が犠牲になり、恋に落ちたTVキャスターのヴィンスとカーラも戦闘に巻き込まれる。
上院議員は報復戦争を国民に説き、トラクター会社社長が工場での兵器生産を米軍から依頼される。
そして、NYが壊滅すると、元のバーの場面に戻って、最後に催眠が解ける。
占い師は「仮想体験」の中には登場せず、最後の場面になってやっと口を開き「この様な結末を迎えたくなければ、皆が力を合せて集中しなければならない」と説く。

平和を維持するためには国民が一致団結して軍備増強をする必要がある、という認識を新たにして散って行く。
要するに富国強兵論が展開される話だ。

一見、軍備増強して米ソ冷徹を煽るような話に見えるが、本作の本当の怖さは戦争ではない。
「集団催眠」、言い換えれば「洗脳」によっていとも簡単に人々が戦争に向かうプロパガンダの怖さを描いているところに感心する。

つまり、この「占い師」の役割はマスメディア。
マスメディアによる宣伝効果が絶大であることを最終的に描いているのだ。
催眠中は目の前の光景をリアルに見せ、最後に催眠から醒めると、実はマスメディアによる洗脳が完成したというヒネリのある結末。

表面上は核戦争の恐怖を煽り、戦争礼賛に見える映画だが、同時に人々を戦争に向かわせるマスメディアによる洗脳の恐怖をも描いている。

戦争に至る病とは国民の集団狂気である、という裏のテーマがある。
共産国に対して、アメリカがナチズムのような「赤狩り」をしようとする結末が怖い作品である。
軍備増強を誓う人々に「本当にそれで良いのか?」と考えてしまう。
現代の目で見ると、これもまた反戦映画である。
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