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男はつらいよ 寅次郎恋歌のbluetokyoのレビュー・感想・評価

男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971年製作の映画)
4.0
人気作。傑作ではないものの、以降のシリーズのスタンダードを決定づけた作品といえる。とにかく、セリフ、ギャグが、バシバシと決まりまくるのだ。
徹底的に練り上げられたシナリオをもとに、経験値の高い俳優陣が、その持っている技量を存分に発揮しているので、面白くないわけはないのである。
そういえば、男はつらいよシリーズでは、ヒロイン、マドンナ役に、新人は使わない。練達の女優さんを迎えているのである。

冒頭は、四国のどっかの田舎町。坂東鶴八郎一座が芝居をうっているが、雨が降っていて、客はいないのでお開きになる。
寅さん、仕方なく帰る。看板女優、といっても純朴そうな女の子が傘を差して送ってくれる。
寅さん、女の子に別れ際に声をかける。つれえことはねえかい。
女の子、つらいことはあります。でも、舞台に立つと、全部忘れるんです。

冒頭のこの言葉がすべてなんだろうなあ。

柴又、とらやに帰って来る寅さん。やっぱり、おいちゃん、おばちゃん、まわりと衝突してしまう。面白くないので外へ出てしまう。

夜中にべろべろに酔っ払って、仲間を二人連れて来る。
おいちゃんもおばちゃんもさくらさんも険悪な表情。入ってくんなビームを発している。
おかまいなし、寅さんは店内に入り、なんか、酒盛りな感じじゃあねえな、と思い始めている二人の仲間も店に入れる。

陰険な雰囲気なので、ちょっとカチンときた寅さん、おい、さくら、なんか、歌え、と言い出す。
おいちゃんは怒って、さくらは、芸者じゃねえぞ、と言う。
余計、苛立った寅さん、テーブルの上に置いてあるコップや何かの食器を肘で、全部薙ぎ払うように土間に落としてしまう。

これはやべえなという感じの中、さくらさん、ええ、いいわよ、と言って、寅さんたちのもとへ。

いいぞ、いいぞ、歌えー、と一人盛り上がる寅さん。

さくらさん。かあさんが、夜なべをして、てぶくろ編んでくれたー、と小さいが澄んだよく通る声で歌い始める。
さくらさん役の倍賞千恵子さんは、歌手でもあるので、本当にいい歌。
この歌で、さすがの寅さんも黙り込んでしまう。残り二人も、こそこそと、外へ出て行ってしまった。

寅さん、すっかり落ち込んで、カバンを持って出て行くのであった。

あーあ、行っちゃった、寅さん。そんな後日のこと、博の母親が危篤という電報。

すぐに、博とさくらさんは、実家の岡山へ。母親は亡くなった。

母親の葬式の日、なぜか。寅さんも来ている。寅さんの得意は葬式なので、来てしまうわけだ。腕に黒い腕章。さくらさんは咎めたが、喪服を用意できなければ、黒の腕章でぜんぜんいいのである。

通夜の席で、突然、博が、母親は不幸だったと、ぶちまける。女中でしかなかった、ということだ。
まあまあ、とまわりに宥められてその場はうやむやに終わった。実は、博の母親は、以前、博に会いに来ていたのだが。

父親は、博の言葉に、何ごとか期することがあったようなのだ。

父親は、実家で一人残って生活することになったが、お手伝いさんが来るまで、なぜか、寅さんも残った。

寅さんとの別れ際に、父親が切々と言うのだった。
ある地方を一人歩いていたときのこと。りんどうの咲く庭のある農家があった。その家には温かな家族団らんがあった。それが忘れられない。

父親は博に言われて気付いたのである。研究に没頭して、家族、とりわけ妻を顧みることはなかった。家族としての触れ合いがなかった、ということ。それを寅さんに言いたかったのだ。

さっそく、柴又、とらやに帰った寅さん、博の父親に言われた、りんどうの話をするのであったが、おいちゃんもおばちゃんも、寅さんが何を言いたいのかわからない。
だが、さくらさんはピンときた。で、お兄ちゃんは、ようするに、結婚したい、ということね。

寅さん、我が意を得たり。このさい、少々歳がいっていても、離婚していても、子どもがいてもいいよ、と告げるのだ。

そんなときに限って、ぴったりの女性が、町内に引っ越してくるわけだ。

六波羅貴子。喫茶店ロークの女主人。おそらく、前からあった店舗みたいなので、店の権利を買い取ったのだろう。現実の店舗を撮影したらしい。
新しく新築したわけではない。

ということで、寅さん、貴子さんと会ったり、喫茶店ロークに顔を出したりするのだ。

そんなことをやっているうちに、博の父親が上京してくる。しばらくして帰ったが、おそらく、博の一家と暮らしたかったのだ。
次の回あたりで、博とさくらが、無理をして、一軒家を持とうとするのは、父親のことがあったわけだ。
さらに、このことが、寅さんと貴子さんの別れの伏線になっている。

いつものように喫茶店ロークに寅さんがいるとき、不動産屋から貴子さんへ電話が掛かってくる。
貴子さん、えらい剣幕で、保証金(敷金)のことなんか聞いてませんよ、と言うのだ。
それを聞いていた寅さん、うなだれて、こっそりと、店を出るのだった。甲斐性なしなので、金銭問題が出てくると、なすすべがないのだ。

しばらくして、りんどうの鉢植えを持って、寅さんは、貴子さんの家を訪れる。
寅さんの中では、りんどう=家庭団らんなのだ。

貴子さんは、うれしそうにりんどうの鉢植えを受け取ったが、次の一言が寅さんを奈落に突き落とすのだ。

貴子さん、いいわねえ、旅の暮らしって。
ああ、いいなあ、旅って。私も今すぐにでも旅に行きたいわ。こんな店やなにもかも捨てちゃって。ねえ、寅さん。

寅さんは、旅が辛くて、家族団らんが欲しいのだ。それを貴子さんはわかってくれない。

寅さんは、貴子さんの家を出るのだった。さらに、とらやも出て、また、旅に出る。

旅先で、いつぞやの旅芸人と再会する。
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