このレビューはネタバレを含みます
純粋に映画を楽しみたいなら、その原作小説を直前に読むべきではないと学んだ映画。
せっかくだからと小説を十数年ぶりに読み返してから視聴。
当時は知らんけど今観るとキャストが結構豪華。ちょい役で滝藤賢一もいる笑。江口のりこは原作でも居ない役だし今作も何のために居たのかわからんな。多部未華子の泣き顔とロケットに乗り込むまでの嫌そうな顔がツボでした。
ストーリーの根幹は原作を踏襲して自分なりに映画を撮りましたという感じだけど、それにしては曲の無音間に女の叫び声が聞こえて助けに行くというくだりはそのままで、原作ではハイジャックだったのをシージャックにしてるだけとか中途半端な印象。それなら原作を忠実に再現した方が良かったと思う。
坊ちゃんプロデューサーが実はこの売れないバンドの曲が好きという原作設定は、個人的に好きだったので入れて欲しかったなあ。でも今作オリジナルの「フィッシュストーリー」翻訳本の制作秘話は納得できて面白かった。「フィッシュストーリー」という本を翻訳したのも誰かの父親で、「フィッシュストーリー」という曲を世に送り出した立役者もレコード屋店主の父親だったから、「礼なら父に」と言う展開も追加であるんじゃないかと期待したけどそんなこともなく、オチにすら使われない始末。
ラストの回想シーンで全ての話はこう繋がってましたという見せ方は安直な印象。原作を知らない視聴者にはあれ位わかりやすい方がいいんだろうけど、伊坂作品の醍醐味でもある作中散りばめたピースを受け手側で組み立てさせて最後に感動させるという魅せ方を期待してしまった。
原作を読んですぐの視聴だったので、どうしても原作との比較という視点で今作を観てしまい、映画そのものの感想をほぼ持てていない。今作を観た後に原作を読むという逆の順番だったら印象も違ったんだろうな。