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セデック・バレ 第二部 虹の橋の洋梨のレビュー・感想・評価

3.9
第2部はセデック族の戦士達が負けることが判っているのに誇りのために戦って死ぬ話。
只一寸待てよと思う。この事件を機に漢人も支配できなかった高砂族を日本は支配することになるが、他民族の支配に玉砕覚悟で一矢報いようとする高砂族の姿は、西欧列強に攘夷を決行した幕末の日本人と重なるものがあるということだ。
セデック族と日本人の違いは何か。教養を持ち武装した支配階級が国を統治していたこと、農業・商業が発達し市場経済が形成されていたこと、西欧列強のアジア支配に早くから危機感を持ったこと、諸々あるだろうが、倒幕が遅れ列強に切取御免で分断統治されていたら、我々がセデック族の憂き目に遭っていたかもしれぬ。寸での処で日本は独立を保ち西欧列強に肩を並べたが、一歩間違えば彼らと同じく同士討ちや自滅の戦いを挑んでいたかも知れぬ。
日本人が大虐殺される話なのに蕃族の方に共感してしまうのは、そこにかつての日本人の姿を見るからだろう。
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