ケンヤム

太陽を盗んだ男のケンヤムのレビュー・感想・評価

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)
4.8
なんなんだろう、この映画。
この既視感はなんなんだろう。

はっきりとした理由なしに、原爆を作る。
国を脅す9号。
それを嬉々として取り上げるマスコミ。
呑気に盛り上がる無知な大衆。
自分の作り出した放射能に恐怖する9号。
9号と刑事が原爆を取り合う。
原爆をこの世から無くそうとした刑事は死ぬが、原爆を作った9号は生き残る。
そして、たくさんの人が死ぬ。

映画を振り返って気づく。この映画は私たち自身の物語なのだ。
地球に住む私たちの物語。
核をやめられない私たちの物語。

クレイジーだ。私たちはクレイジー。
私たち人間は、はっきりとした理由なしに破滅に突き進んでいくことができる。

自分とはなんなのか。人間とはなんなのか。この問いかけから、逃れ続けて生きていくことはできない。逃れ続けながら生きていくとすれば、9号のように、自分以外の物質に自分を憑依させるしかない。そして、その先には破滅しかない。

映画という、フィクションの世界の根底に流れるリアリズムを私たちは見逃してはいけない。
ケンヤム

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