安定の役者陣による黒澤現代劇。三船敏郎はもちろん貫禄だが、本作は仲代達矢と何といってもラストの山崎努。そして普遍的な作品に仕上げる脚本の素晴らしさ。
貧富の格差を象徴的に見せる高台の豪邸と川沿いのバラック、失ったものと得たものが逆転する犯人と被害者、重役連中の品性のなさと雇われ人たちの誠実さ、横浜の街の表と裏、天国と地獄を様々な対比で見せ、また時にそれを転換させながら観る側に本質を問いかける。古びないはず。
場面も、室内劇から走る列車、捜査本部と次々と変わり飽きさせない。終盤のアップ多めの構図と音楽も斬新。完成度に驚く。