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天国と地獄のyokoのレビュー・感想・評価

天国と地獄(1963年製作の映画)
3.8
いわゆる有名な誘拐劇そのものは1時間ほどで解決、踊る大捜査線でパクられたあのシーンもそこまでカタルシスはない。子供の発言がいかにも過ぎて・・・。誘拐の罪では当時は軽すぎるので(黒澤明は誘拐罪が軽すぎるのを啓蒙することもテーマとしてこの作品を考えたらしい)刑事は犯人の目星は付けるものの逮捕を保留にして色々ボロが出ないか引っ張る。のでぬるい尾行、緩い捜査の後半は主犯の山崎努のぶらり横浜一人旅みたいな様相。なので子供が生還してからは集中力がつらい。最後たどり着いた黄金町?あたりのドヤ街の描写が文字通り地獄なのは面白い。薬中ウロウロは日本初のゾンビ映画ではないか?最初のイメージでは犯人はもっと無敵な人よりかと思ったが、医者の卵であり経済的な困窮はなさそうで三船山崎両者にあまり資本主義の光と影みたいな対立は感じない。

山崎は三船との立ち位置で天国と地獄を喩えていたが、三船の山の上の豪邸も天国じゃないし、山崎の居場所も地獄ではない。だからこそラスト対面で俺全然幸せちゃうぞと対立の構図の不成立に困惑する三船の顔、期待していた金満クソ野郎じゃないことに対立がくずれある種のトリガーになり震えを生理現象だと嘘吹き発狂する山崎。この世に天国はない。あるのは地獄だけだ。



ダウンタウンの デカ長特製焼飯 のコント、ごっつの車窓 から、をめちゃくちゃ思い出したw
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