冷蔵庫とプリンター

妻と女秘書の冷蔵庫とプリンターのレビュー・感想・評価

妻と女秘書(1936年製作の映画)
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 社長クラーク・ゲイブルとその秘書ジーン・ハーロウがあまりにも親密すぎて、両者の相手である妻マーナ・ロイと若きジェームズ・スチュワートの中に疑惑がうずめき苦悩するという話。3分の2くらいまではプロローグに過ぎず、いよいよ妻対女秘書の構図が見えてくるのがハバナ出張あたりで、ゲイブルとハーロウがギリギリくっつきそうでくっつかないところを洗練された会話の駆け引きで見せているのだが、これがめちゃくちゃ面白い。「靴を脱がしてくれないか」と頼むゲイブルと応じるハーロウ、どちらもポーカーフェイスを決め込んでいるところが良い。
 極め付けはラストシーン。「夏服を買ってこい。請求は俺に」というゲイブルの"求愛"の前後で足音が近づいてくるのだが、その緊迫感が凄まじい。最後に対面する二人の女、これまたどちらも表情を崩さないのがかっこよくて痺れた。
 典型的な男性性を付与されたクラーク・ゲイブルに、本作では一切決定権を与えていないところが興味深い。ゲイブルが妻か女秘書かと悩むシーンは全くなく、妻がダメなら秘書に乗り換えたろぐらいに考えていることが演出でよくわかるようになっており、そのことによって逆に、妻と秘書、どちらが身を引くかという女性主体の話になっている。