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聴こえてる、ふりをしただけのodyssのレビュー・感想・評価

2.5
【女だけの世界】

女性監督による女性映画です。

と書くと、えっと思う人もいるかも知れません。しかし、この作品には男がほとんど登場しません。唯一の例外はヒロイン(小学校5年生の少女)の父です。

両親と3人暮らしだった少女は、母を病気で失い、父と2人暮らしになる。しかし父は妻を失ってからおかしくなり、会社も辞め、引きこもりみたいになってしまう。

この設定、私は監督・脚本が女性だからではないかと思いました。つまり、男を描くことを拒否している、或いは描くことができない、としか受け取れないのです。

少女の家庭には、近所に住む親戚のおばさんが出入りして家事をしますし、学校では少女の交友範囲は女の子だけで、男の子は背景としてしか登場しません。また担任の教師も女です。

つまり、監督はこの映画で女の世界を描いたのであり、男はそこに入ってくることを赦されていないのです。監督がそのことにどこまで自覚的だったのか、私には分かりません。しかし私はかねてから男を描けないことが女性監督の限界ではないかと考えていたので、ここでもその一例を見たように思われたのでした。

なぜ女には男が描けないのか。これは一考を要する問題ですけれど、ここでは問題の提示だけにとどめます。
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