溌狩

マイク・ザ・ウィザードの溌狩のレビュー・感想・評価

マイク・ザ・ウィザード(1988年製作の映画)
4.0
・映画監督を目指すSFXオタクのマイク。ある日、彼はハリウッドのプロデューサーのもとでテレビ映画を作る機会を得る。しかし、彼の映画作りが失敗することに賭けたプロデューサーに横槍を入れられ、超低予算と短納期の中での制作を強いられることに。それでもマイクは挫けず、仲間たちとともにストップモーションやロトスコープなど自前の特殊効果で撮影を進めていく……というおはなし。

・私が好きな「映画を作る映画」だ。数多の名作に漏れず、これも映画への愛や"創る喜び"に溢れている。それだけでグッときて胸が熱くなるのだけど、この作品の最大の特徴はマイクが手掛けるストップモーションの数々。1秒24コマの世界を仲間たちと一緒に試行錯誤しながら、雨が降っても風が吹いても少しずつ地道に作り上げていく。魔法使いになったマイクが撮影道具に命を吹き込んでいく様は、彼が愛する映画と戯れているようで心の底から楽しそうに見えた。
ストップモーションで映像を作る過程を「苦労」ではなく「楽しみ」で描くのが良い……。

・マイクの作品だけでなく、この『マイク・ザ・ウィザード』という映画自体にもストップモーションやロトスコープがふんだんに使用されているのも面白かった。
ただ移動するだけのシーンでも、マイクは飾り付けられたスペシャル自転車で稲妻のように街を駆ける。常に登場人物たちがチャキチャキと動いていたり、1コマ単位で観客を楽しませようという気概が嬉しい。なんてことないシーンに異常な手間がかけられている。

・ひたすらに楽しい映画ではあるのだけど、終盤のマイクのセリフで「誰にも観られることのない映画を作り続けて何になるんだろう」と、創作の孤独にも触れらていて胸が締め付けられる。ルール無用のハチャメチャコメディでありながらも、創ることに誠実だった。
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