2000年公開時はちょうど桜の季節に観たが、今回はお盆の時期。青山監督の追悼公開だったので時期的には良かった。映画でも蝉時雨がBGM的にノイズ音楽のように流れてくるのであった。
モノクロ(セピア色)は、空虚感というような。ラストの展開が色即是空とは真逆な空即是色なのだ。それは運転手の沢井の生き方、わからないのだ。明晰な光の空間だけではない奥深い闇を見せる。それでも人は死ぬまで生きていかねばならない。奥深い闇の境界に踏み込んでしまった直樹に沢井が言う。
「生きろとはいわん。死なんでくれ」
明晰さだけでは生きていけない闇の世界。その闇を捉えようとする映画なのだ。なぜ人を殺してはいけないのか?という彼らの言葉に真面目に応えられる大人な少なかった。明確な答えよりも、間違ってしまったときに受け止めてくれる者がいるかいないかの世界なのだろう。境界を超えた者への断絶社会だからなおさら青山真治監督のこの映画は、今こそみるべき映画なのかもしれない。
宮崎あおいが小学生からの成長記録のような映画なのもいい。その時期にしか撮れない少女性。