2018.1.4 観たくなって再視聴。福岡バスジャック事件の被害者である運転手と幼い兄妹の再生までを描いた、青山真治監督の傑作。
殺人現場から生き残った３人。それぞれの喪失を経て共同生活を始めるも、心の平穏は取り戻せないでいる。静かな夏、汗ばむ肌。耳にたかるハエの雑音。澤井の不快な咳。同じ場所をただ行き来する自転車。唯一訪ねてきた普通の若者、イトコの秋彦も打ち解けられない。やがて、止まった時間をのせて、再びバスは走り出す。
薄ぼんやりしたクロマティックな風景に、延々とつづく宛のない田舎道。さまよい、ただよい、揺れる人たちの心象のような水の表現。３時間以上の着地点がどこだか分からないまま、静けさと緊張感が通奏低音として流れつづける、抑圧的ロードムービー。終わりまで目は離せず、追体験として正直とても疲れる。
大観峰の先から振り返った梢は、梢自身を取り戻したんだ、と思う。表情は清々しく、世界は色づいていく。あれほどの解き放つ感覚、この15年どんな映画にもない。
