しばらくのあいだ、感想を言い表すことも
はばかってしまうような作品だった。
戦争モノと身構えて鑑賞しても、
あの世界にゆっくりと引き込まれる。
大変な暮らしのなかに笑い声があって、
人情があった。
ハマり役だったのんさんはじめ、
等身大の人物描写は素晴らしく、現代人の自分を
同じ視座にいざなってくれるようだった。
ストーリーはそのまま
穏やかに進めばよかったのに、と焦らす。
少しずつ身近に迫ってくる戦火、
個人の視点から描かれる別れのえげつなさ、
「何がよかったんだろう」という
コトバのやるせなさ。
すぐには直視できない悲しみを超えながら、
それでもしたたかに生きる人たちがいたこと。
日本の映画、アニメーションを通して
そのままを伝えてくれることに
ありがとうと言いたい。
下手に評価しないで、
この感覚をそのまましまっておきたい。